物件情報
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所在地:新潟県糸魚川市青海(大字)
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交通:青海駅 徒歩3分
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周辺環境:海まで徒歩1分(翡翠拾える海岸が近隣)
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建物構成:築年不詳(明治期)古民家(9室構成)
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用途の幅:旅館・民泊・オフィス・倉庫・住居・テナント(カフェ等併設可能)
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駐車:駅前ロータリー駐車可能
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家賃:月額 ¥68,000
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敷金/礼金:敷金なし/礼金1ヶ月
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管理費等:0円
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注意点:内装・設備・改修要件は未記載。現地確認と見積もりが不可欠。
民泊適正評価(箇条書き)
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立地・魅力ポイント
・海岸まで徒歩1分、海好き客層に訴求力が高い
・青海駅徒歩3分という駅近立地で観光客アクセス性あり
・複用途利用(テナント併設、カフェなど併用)可能な構造的柔軟性 -
リスク・課題ポイント
・築年数が古いため、改修・補修・構造強化コストが高額化する可能性
・断熱・防寒対策が不十分だと冬季暖房コストが重荷になる
・地方の海沿い・ローカル線地域ゆえ、年間を通して集客母数が小さい
・冬場・閑散期は実質稼働率が極めて低くなりうる
・用途規制・許認可取得(簡易宿所・旅館業・消防法規制など)がネック
・清掃・維持管理コスト、備品補修コスト、遠隔地運営の手間が増大
周辺地域の平均稼働率
糸魚川市全体の宿泊統計データにより、参考になる実績値を確認します。糸魚川市全体では、令和4年度時点で 年間平均稼働率 約 23.2 % と推定されています。 上越市公式サイト
また、新潟県地方部全体でも客室稼働率は全国平均に届かない傾向が見られ、地方部での稼働率改善余地が指摘されています。 新潟県庁公式サイト+1
さらに、最近の宿泊旅行統計(中部管内)では、簡易宿所タイプなどで稼働率 26.1%という数字も報告されています。 国土交通省交通政策研究所
以上を踏まえると、この物件では「一棟貸し運営」で、年間平均稼働率 25~30%程度 と仮定するのは、やや楽観~中庸の範囲と考えられます。ただし、夏季・連休期は稼働率が高まり、冬季はかなり落ち込むという偏りを前提に運営を設計すべきです。
売上試算(「一棟貸し」前提、1泊平均¥20,000で計算)
一棟貸しという運営方式とするなら、部屋別収益ではなく、「建物全体を一客体として貸す/提供する」形態または一棟貸し的な運営スタイルを想定します(例:グループ・家族向け貸切宿)。以下、仮定条件と収支モデルを示します。
仮定条件
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一棟貸し宿泊単価:¥20,000/泊
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年間営業日数:365日
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平均稼働率:25%(保守的な前提)/30%(やや意欲的前提)/20%(下振れケース)
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運営コスト(清掃・備品・光熱費・消耗品等):宿泊収入の 30%
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固定費:家賃 ¥68,000 × 12 = ¥816,000/年
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その他費用:広告宣伝、保険、税金、管理手数料などを年間仮で ¥300,000 と見積もる
売上・利益シミュレーション
稼働率 | 年間売上(宿泊収入) | 運営コスト(30%) | 粗利益 | 固定費等控除後利益 |
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25% | 365 × 0.25 × ¥20,000 = ¥1,825,000 | 547,500 | 1,277,500 | 1,277,500 − (¥816,000 + ¥300,000) = ¥161,500 |
30% | 365 × 0.30 × ¥20,000 = ¥2,190,000 | 657,000 | 1,533,000 | 1,533,000 − (¥816,000 + ¥300,000) = ¥417,000 |
20% | 365 × 0.20 × ¥20,000 = ¥1,460,000 | 438,000 | 1,022,000 | 1,022,000 − (¥816,000 + ¥300,000) = –¥94,000(赤字) |
解説:
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稼働率25%前提だと、年間利益は非常に薄く、 ¥161,500 程度になる計算。初期改修費を回収するには遠い水準。
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稼働率30%を達成できれば、年間利益約 ¥417,000 という見込み。あくまで“薄利”ながら運営可能なライン。
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稼働率20%では、固定費を賄えず赤字となるので継続は難しい。
このように、一棟貸し運営においては「稼働率の上下」が利益に直結するため、稼働率維持・向上対策が命綱となります。
なお、上記モデルでは改装初期投資回収や設備更新費、予備資金、金利借入返済などを含んでいませんので、実質的な利益はこれよりもさらに下振れる可能性が高いです。
想定利益が低い場合の改善アイデア
利益が思うように伸びない可能性を減らすため、以下戦略を併用するとよいでしょう:
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稼働率向上施策
・閑散期対策:連泊割引、平日割引、長期滞在割引
・プロモーション強化:SNS・OTA(Airbnb、Booking、楽天トラベル等)で露出増加
・地方旅行割引制度・補助金活用(自治体キャンペーンと連携) -
付加価値サービス提供
・翡翠探し体験、地元ガイド散歩、漁業体験、料理教室など地域体験プログラムを有料オプションで提供
・朝食や地元食材を使った料理提供 -
併用用途収益化
・空き時間・閑散期に建物をイベントスペース・ギャラリー・カフェとして貸出
・テナント部分を使って地域向けカフェ・物販併設 -
運営コスト最適化
・清掃回数の最適化、セルフチェックイン導入、自動鍵システムなど無人運用強化
・光熱費節減(省エネ設備、断熱改善) -
段階改装戦略
・初期段階は最小限の補修・改修で着手 → 利益が出始めたら段階的にグレードアップ改修 -
多チャネル集客とリピーター重視
・国内・近隣県向け誘客、インバウンド客対応(多言語サイト、外国人向けPR)
・宿泊者に次回割引や口コミ促進などリピーター設計
総括と提言
改めて評価すると、この物件を「一棟貸し民泊拠点」として運営するモデルは、宿泊単価を高く設定できる利点を活かせる反面、稼働率を十分に確保できなければ利益率が非常に薄いか赤字に転落するリスクも高いものです。
特に地方海沿い地域という性質から、夏期や観光シーズンには需要がある一方で、冬季や平日は稼働が落ち込みやすいという季節変動リスクが大きいです。また、古民家改修・補修コスト、断熱・暖房設備、法規制対応といった初期投資項目は無視できず、これらをどう抑えるかが成否を分けます。