物件情報と民泊適正評価
■評価のポイント
この物件の評価は「リスクの低さ」に尽きます。
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良い点: 賃料2万円、敷金礼金無料という条件は、民泊事業の固定費リスクがゼロに近いことを意味します。この安さであれば、稼働率が一時的に落ち込んでも赤字になる可能性は極めて低いでしょう。また、オーナーが民泊に協力的であるため、手続きがスムーズに進む期待が持てます。
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悪い点: 6畳一間という狭さは、差別化が難しく、宿泊単価が上げにくい要因です。また、最寄りの鹿島神宮駅からのアクセスが悪く、車がない観光客にとっては不便です。鹿嶋市は筑波エリアのような高稼働率を期待しづらく、集客には工夫が必要です。
契約前に確認するポイント
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民泊事業の法的な確認: オーナーが協力的な場合でも、鹿嶋市での**住宅宿泊事業法(民泊新法)**に基づく届出が可能か、あるいは簡易宿所としての許可(旅館業法)が必要かを確認し、行政への手続きを明確にしましょう。
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複数棟借り上げの条件: 収益を上げるには複数棟の運営が必須です。何棟まで借り上げが可能か、賃料や管理費は棟ごとにいくらになるのかを交渉し、全体の事業計画を立てる必要があります。
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水回り・電気容量の確認: 築年数が不明のため、エアコン、給湯器などの設備の老朽化リスクがあります。また、民泊は特に電気・水道の使用量が多いため、6畳一間とはいえ、エアコンやIH調理器具設置のための電気容量に問題がないか確認が必要です。
周辺地域の想定稼働率と想定年間利益
茨城県全体の民泊稼働率は50%〜60%が目安ですが、鹿嶋市の「緑ヶ丘」という郊外立地と、1Rという商品力を考慮し、地方の郊外物件の目安である低めの稼働率を設定します。
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現実的な年間平均稼働率: 40%(年間約146日稼働)
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平均宿泊単価(設定): 6,000円/泊(1〜2名利用の低価格設定)
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月間固定費: 20,000円 + 3,000円 = 23,000円
この前提で単棟の収益をシミュレーションします。
【結論】 この物件は家賃が安いため「家賃が高すぎる場合は利益が出にくい」というリスクは皆無ですが、単棟での運営では採算が合わず、手間賃にもなりません。 収益を上げるためには、必ず複数棟を借り上げ、清掃や管理を効率化する戦略が必須です。
想定利益を改善するためのアイデア:多棟運営戦略
この物件の成功は「複数棟」のポテンシャルにあります。例えば、5棟を借り上げた場合でシミュレーションを行います。
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月間固定費: 23,000円 × 5棟 = 115,000円
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月間総売上: 72,000円 × 5棟 = 360,000円
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月間経費合計: 115,000円(固定費) + 50,000円(集中管理費) + 90,000円(清掃費) = 255,000円
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月間純利益(5棟): 360,000円 − 255,000円 = 105,000円
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想定年間利益(5棟): 1,260,000円
5棟の運営で年間126万円の利益が見込めます。この戦略を成功させるための鍵は以下の2点です。
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ターゲットの特定と集中:
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サッカー観戦者: 鹿島神宮駅近辺のホテルよりも安価な宿泊先を探す層をターゲットに、鹿島神宮駅からの送迎サービス(自家用車)を付加価値として提供します。
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工業地帯のビジネス需要: 1Rという特性を活かし、**長期出張者(マンスリー・ウィークリー)**向けに特化し、清掃コストを削減しつつ稼働率を上げる戦略が最も有効です。
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清掃・管理業務の効率化: 複数棟が近接している可能性が高いため、清掃を内製化するか、まとめて清掃業者に依頼することで清掃費を単価の30%以下に抑えることが、利益を最大化する絶対条件となります。