物件情報と民泊適正評価
■評価のポイント
この物件は、固定費の安さと立地の悪さが極端なトレードオフになっています。
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良い点: 賃料5万円という固定費の安さは、周辺の家賃相場(3DKで7.5万円)と比較しても非常に安価です。さらにフリーレント1ヶ月、敷金礼金なしは、初期投資を大幅に抑え、キャッシュフローを安定させます。「家賃が高すぎる」リスクは皆無です。
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悪い点: 駅徒歩30分は致命的なハンデです。特に旅行者は荷物が多く、坂道が多い横須賀でのアクセスは困難を極めます。また、**「建物に傾きがございます」**という記載は、構造的な問題や心理的な不安を伴うため、宿泊客のレビューに悪影響を及ぼす可能性があります。
契約前に確認するポイント
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「建物の傾き」の詳細な確認: 最も重要です。どの程度の傾きか(計測値)、構造上安全か、宿泊客が感じる不快感のレベルを、内覧時に必ず確認し、オーナーに修繕の予定がないか確認すべきです。傾きが原因でレビューが下がると、事業は成立しません。
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民泊事業利用時の条件: 募集では「民泊相談!」となっていますが、事業用途の場合、礼金2ヶ月・敷金2ヶ月・保証料初回100%という重い費用がかかる可能性があります。民泊利用時の具体的な賃料と初期費用の条件を、事前に明確に交渉し、書面で取り決めましょう。
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短期解約違約金のリスク: フリーレント適用には1年未満の解約で賃料1ヶ月分、1年以内3ヶ月、2年未満1ヶ月の違約金がかかります。事業が立ち上がらなかった際のリスクとして、事前に把握しておく必要があります。
周辺地域の想定稼働率と想定年間利益
横須賀市は観光・ビジネス需要がありますが、この物件は郊外の不便な立地です。宿泊単価も立地に応じて抑えめにする必要があります。
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現実的な年間平均稼働率: 50%(年間約182日稼働)
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平均宿泊単価(設定): 12,000円/泊(駅遠立地のため低めに設定)
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月間固定費: 50,000円
この前提で収益をシミュレーションします。
【結論】 年間66万円という利益は、初期費用が安い点を考慮すれば悪くありませんが、労働対価としては十分ではありません。この物件の成功は、**「車必須の立地」**を逆手に取り、車での集客に特化することで、徒歩のハンデを解消できるかにかかっています。
想定利益を改善するためのアイデア:立地と個性を逆手に取る戦略
この物件で安定した利益を出すためには、「駅徒歩30分」というネガティブな要素を打ち消す付加価値を提供する必要があります。
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車での来訪者向けに特化: 駅からの不便さを前提とし、駐車場サービスをメインにアピール。横須賀は米軍基地や観光地へのドライブ需要が高いため、「横須賀観光の拠点」として、車でのファミリー層や団体客をターゲットにします。
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ニッチなテーマ設定: 横須賀らしいニッチなターゲット層を狙います。
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軍港ビューラー向け: 汐入周辺は軍港の雰囲気が強いエリアです。「横須賀港が見える隠れ家」として、マニア層や外国人旅行者を惹きつけます。
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DIY・リノベ体験: 築古物件、リフォーム済みという点を活かし、内装に米軍ハウス風のレトロな雰囲気を取り入れ、コンセプト重視の宿泊施設として単価の向上を狙います。
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超長期滞在者に切り替える: 民泊(短期)での集客が難しい場合は、賃料の安さを活かして工事関係者や研修生、学生向けのマンスリー・ウィークリー物件として運営し、清掃費や手数料を抑えて稼働率を最大化する戦略への切り替えも検討すべきです。