物件情報と民泊適正評価
この物件は、JR大久保駅徒歩1分、JR山手線新大久保駅徒歩5分という、新宿区でも屈指の好立地にある鉄骨造・築35年の建物です。使用部分面積は135.73m$^2$のメゾネットで、大人数を受け入れる施設としては申し分ありません。特筆すべきは「民泊可」という希少な条件が付いている点です。
■最大の良い点:立地と広さ 立地は、インバウンド観光客が集中する新大久保エリアの駅前であり、集客力は抜群です。周辺の需要から見ても、集客が難しいということはなく、むしろ稼働率の面では非常に高い水準を期待できます。メゾネット構造と広さ(135.73m$^2$)から、ファミリーや団体客をターゲットにした高単価設定の可能性を秘めています。
■最大の欠点:高すぎる家賃と初期費用 この物件の最大の欠点は、民泊利用時の賃料が**月額90万円(+消費税)と極めて高額であることです。これは、店舗・事務所利用時の66万円から大幅に引き上げられています。また、初期費用として保証金6ヶ月(540万円)と、解約時に敷引3ヶ月(270万円が戻らない)**という非常に重い費用がかかる点も、事業の初期投資を圧迫し、利益を出しにくくする大きな要因です。
契約前に確認するポイント
この物件で事業を始めるには、以下のリスクと費用負担を徹底的に確認する必要があります。
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賃料の再交渉: 賃料90万円(+税)は、事業計画を圧迫する最大の要因です。契約前に、内装工事費用の負担や長期契約を交渉材料に、賃料の引き下げを粘り強く交渉しましょう。
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初期費用の負担: 保証金が高額な上、実質的に3ヶ月分(270万円)が償却されるため、初期費用回収に時間がかかります。この資金繰りリスクを考慮した綿密な計画が必要です。
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内装工事の範囲: 物件は貸店舗・事務所仕様のため、民泊として利用するには、水回りの増設や間仕切り壁の設置など、大規模な内装工事(数百万〜1千万円以上)が必須です。工事の費用負担や、オーナーにどこまで許容されるかを詳細に確認し、書面で取り決めましょう。
周辺地域の平均稼働率と想定年間利益
新宿区の民泊市場は非常に活発です。検索データによると、新宿区の平均稼働率は80%〜81%と極めて高い水準です。
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現実的な年間平均稼働率: 80%(年間約292日稼働)
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平均宿泊単価(仮設定): 50,000円/泊(大人数対応の高単価設定)
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月間賃料(税込み): 900,000円 + 99,000円 = 999,000円
この前提で収益をシミュレーションすると、以下の結果になります。
【結論】 立地は最高ですが、この物件は家賃が高すぎるため、現在の賃料設定では運営しても利益が出にくいどころか、年間約190万円の赤字になる可能性が高いという非常に厳しい評価となります。このままでは採算が合わず、この物件への投資は推奨できません。
想定利益を改善するためのアイデア
この高額な賃料を乗り越えて黒字化を目指すには、赤字額の15.9万円に加え、初期投資(敷引270万円+内装費)を回収できるだけの利益を上乗せする必要があります。
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宿泊単価の極端な引き上げ: 赤字を回避するには、宿泊単価を最低でも60,000円/泊以上に設定しなければなりません。単価7万円/泊を目指し、内装で徹底的に差別化を図りましょう。新大久保エリアの特性を活かし、韓国の芸能事務所や、高級マンションをモチーフとした「K-POP VIP仕様」など、SNSで拡散されるような尖ったラグジュアリー路線に特化させる必要があります。
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複合的な用途のハイブリッド運営: 民泊単独での運用が困難なため、メゾネット構造と事務所利用可の条件を活かしたハイブリッド運用を検討すべきです。具体的には、平日の昼間は「都心一等地の高級レンタルオフィスや撮影スタジオ」として時間貸しで収益を上げ、夜間や週末、観光シーズンに民泊として高単価で運用する二毛作戦略が有効です。