物件情報
以下は今回診断する物件の概要です。
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物件名: 広島県呉市音戸町波多見4丁目 貸店舗・事務所
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掲載元: OCN不動産
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住所: 広島県呉市音戸町波多見4丁目
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最寄り駅: バス/「水産海洋技術センター入口」バス停 停歩4分
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賃料: 220,000円
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管理費等: - (記載なし、要確認)
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敷金/礼金: 6ヶ月 (132万円) / なし
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保証金/敷引・償却金: なし / -
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使用部分面積: 258.84㎡(約78.3坪)
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土地面積: 403.8㎡(約122.1坪)
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種別・構造: 貸店舗・事務所・鉄骨造2階建(1棟貸し)
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築年月(築年数): 1990年4月 (築35年4ヶ月)
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特記事項:
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2024年12月改装済みで綺麗です
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大浦崎公園キャンプ場まで徒歩12分、店舗開業はもちろん民泊にもおすすめです
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駐車場3台分以上 (駐車4台可(車種による))
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設備: トイレ・トイレ2ヶ所
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用途地域無指定
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現況空、引渡可能時期相談
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契約期間2年
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初期費用: 敷金6ヶ月、初回保証料(賃料の1ヶ月分)、保険要2年(火災)。
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契約期間: 定期借家2年
詳細はこちらのURLをご参照ください: 物件詳細
民泊適正評価:改装済みの大型物件、しかし1階店舗とバスルーム新設が課題
この物件の民泊適正は「広大なスペースを活かし、特定のターゲット(グループ、長期滞在、自然体験など)に特化した、地方型大規模民泊を運営できる、経験者向け」と評価します。
【メリットとして期待できる点】
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広大な面積と1棟貸し: 約78.3坪の建物と約122.1坪の土地は、大人数のグループ、ファミリー、合宿、ワーケーションなど、多様なニーズに対応できます。プライバシーを重視するゲストにも訴求可能です。
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「2024年12月改装済みで綺麗」: 最近改装されたばかりという点は、初期の見た目の良さや清潔感を担保し、一部の費用を抑えられる可能性があります。
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「民泊にもおすすめ」という明確な用途: 貸主が民泊利用に積極的であり、事業開始に向けたハードルが低いことが期待されます。
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充実した駐車場: 4台分の駐車スペースは、車でのアクセスを前提とする旅行者にとって大きな魅力です。
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無指定の用途地域: 事業の自由度が高く、多様な運営形態を検討できます。
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鉄骨造: 木造に比べ耐久性が高く、適切なリノベーションを施せば長期利用が可能です。
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大浦崎公園キャンプ場まで徒歩12分: 自然アクティビティを求める層への訴求ポイントとなります。
【克服すべき課題】1階店舗スペースの改装、バスルーム新設、高額敷金、地方の集客難易度
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広大な1階店舗スペースの改装費用:
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物件写真から判断すると、1階の大部分が広々とした店舗スペースとして使われていたと推測されます。ここを宿泊施設(リビング、ダイニング、寝室など)として機能させるためには、間仕切り壁の設置、床材の変更、照明計画の変更など、大規模なレイアウト変更と内装工事が必要となり、多額の費用がかかる可能性が高いです。
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バスルームの新規設置:
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物件情報には「トイレ・トイレ2ヶ所」としか記載がなく、バスルーム(シャワー、浴槽)は現状存在しない可能性が高いです。宿泊施設として必須であるため、給排水工事を伴うバスルームの新設は、非常に高額な初期投資となります。複数設置する場合はさらに費用がかさみます。
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「改装済み」の範囲と再改装の必要性:
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最も重要な確認事項です。「改装済みで綺麗」は喜ばしいですが、これはあくまで「店舗・事務所」としての改装であり、宿泊施設としての水回り(浴室・シャワー、キッチン)、寝室、給湯設備、断熱などは別途大規模な工事が必要となる可能性が高いです。
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高額な敷金:
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賃料の6ヶ月分、132万円という敷金は非常に高額で、初期の現金支出が大きくのしかかります。
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地方都市の集客力とアクセス:
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広島県は主要な観光地ですが、呉市音戸町は一般的な国際観光ルートからは外れます。主要な駅からのアクセスはバス利用となり、特にインバウンド観光客には不便に感じられる可能性があります。ターゲット層を絞り込み、魅力的なコンセプトと強力なプロモーション戦略が必要です。
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定期借家2年という短期間:
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多額の改装費用を投じる事業において、2年という契約期間は非常に短く、投資回収に大きなリスクを伴います。更新の可能性や条件を事前に確認することが極めて重要です。
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管理費不明:
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月々の運営コストに影響するため、管理費の有無と金額を明確にする必要があります。
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契約前に確認するポイント
この物件で民泊運営に踏み切るなら、以下の点を徹底的にクリアにしてください。
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「2024年12月改装済み」の詳細と、民泊転用に必要な追加改装費用:
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最も重要な確認事項です。 現地内覧時には、必ずリフォーム業者を帯同し、建物の状態、特に水回り(給排水管、浴室、シャワー、キッチン、給湯器の有無と状態)、電気容量、そして1階店舗スペースの現状と、宿泊施設への転用可能性・費用などを徹底的にチェックする。
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宿泊施設として機能させるために必要な全ての改修費用(例: バスルーム新設、浴室複数設置、大型キッチン、寝室区画、家具家電、消防設備など)を複数社から見積もりを取り、予算を明確にする。
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民泊許可の種類と広島県・呉市の条例・規制:
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呉市の民泊(住宅宿泊事業法)に関する条例や、旅館業法(簡易宿所など)での許可可能性を、必ず管轄の自治体(保健所、観光課など)に問い合わせ、詳細な条件、営業可能日数、必要な設備、申請プロセスなどを確認する。広さと用途(店舗)から、旅館業法での許可を目指す方が営業日数制限がなく有利な可能性があります。
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定期借家2年後の更新条件:
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契約更新の可能性、更新料、更新時の賃料改定など、契約終了後の条件を貸主と明確に確認し、書面に残す。2年で高額な初期投資を回収するのは非常に困難なため、更新の保証は不可欠です。
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管理費とその他維持費用の確認:
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物件の管理費の有無と金額、その他発生する維持費用(駐車場費用、清掃、設備点検など)を明確にする。
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バス路線の利便性:
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最寄りのバス停から主要観光地や駅へのバスの運行本数、所要時間、最終便の時間などを確認し、ゲストの利便性を評価する。
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周辺地域の平均稼働率
広島県は年間を通して国内外からの観光客が多い地域ですが、呉市音戸町は広島市中心部や宮島といった主要観光地からは離れた、より地域密着型のエリアです。観光客の主な動線からは外れるため、全体的な民泊需要は広島市中心部よりは低いと想定されます。
しかし、「大浦崎公園キャンプ場まで徒歩12分」という立地や、広大なスペース、駐車場を活かせれば、特定の層(ファミリー、グループ、ワーケーション、アウトドア愛好家、サイクリスト、地元イベント参加者など)にアピールでき、稼働率は30%〜60%程度を目指せる可能性があります。特に、呉の軍港クルーズや、瀬戸内海の多島美を楽しむための拠点として提案できれば、稼働率を高めることも可能です。
運営した場合の想定年間利益(非常に挑戦的なシナリオ)
この物件は賃料が比較的高く、高額な敷金、そして「改装済み」とはいえ広大な1階店舗スペースの改装とバスルーム新設という大規模な追加改装が必要となる可能性が高いです。地方の集客難易度も考慮すると、収益を出すのは容易ではありません。
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月額賃料: 220,000円
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年間賃料: 220,000円 × 12ヶ月 = 2,640,000円
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初期費用:
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敷金6ヶ月(132万円) + 初回保証料(賃料1ヶ月分 = 22万円) + 保険(約2万円) = 約156万円
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大規模改装費用+家具家電備品: 「貸店舗・事務所」から宿泊施設へ転用するため、1階店舗スペースのレイアウト変更、バスルーム新設(複数設置推奨)、大型キッチン、寝室スペース、内装、消防設備、空調など、最低でも800万円〜1,800万円程度と見積もるべきです。「改装済み」は部分的な改装の可能性があり、宿泊施設としてはゼロから構築する覚悟が必要です。
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合計初期現金支出(概算): 156万 + 800万 = 約956万円〜(これに加えて1ヶ月目の家賃)
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平均宿泊単価: 1棟貸しの広さ(約78.3坪)と駐車場、改装済みを活かし、1泊1組40,000円(地方での挑戦的な価格設定)
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年間営業可能日数: 365日(旅館業許可取得を前提とした場合)
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想定稼働率: 45%(地方の立地を考慮した現実的な目標値)
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年間想定稼働日数: 365日 × 0.45 = 164日
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年間想定売上: 40,000円 × 164日 = 6,560,000円
ここから諸経費を差し引きます。
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プラットフォーム手数料: 売上の約10% = 656,000円
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清掃費・消耗品費: (1回15,000円として、164回分、広さ考慮で高め) = 2,460,000円
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水道光熱費: (月4万円と仮定、広さ考慮で高め) = 480,000円
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修繕積立費・その他雑費: (築35年、鉄骨造でもメンテナンス必要) = 360,000円
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運営代行費(アウトソースする場合): 売上の20-30% = 1,312,000円〜1,968,000円 (ここでは自力運営と仮定し含まず)
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年間総費用(賃料含む): 2,640,000円 (賃料) + 656,000円 (手数料) + 2,460,000円 (清掃) + 480,000円 (光熱費) + 360,000円 (その他) = 6,596,000円
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想定年間利益(税・初期費用回収前): 6,560,000円 (売上) - 6,596,000円 (総費用) = -36,000円
この計算では、年間で約3.6万円の赤字となりました。これは賃料と清掃費が高めであること、そして広大な1階店舗スペースの改装とバスルーム新設という多額の初期投資(800万円〜1,800万円以上)を回収する必要があるため、非常に厳しい結果です。稼働率や宿泊単価を上げるか、清掃費や光熱費を極限まで抑えるなど、事業計画の徹底的な見直しが必要です。
想定利益を増やすためのアイデア(「呉市音戸町」の魅力を最大限に活かす)
この物件で安定した高収益を出すためには、呉市音戸町という場所の特性と広大なスペースを最大限に活かし、特定のターゲットに特化した民泊を目指す必要があります。
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「瀬戸内海リトリート」をテーマにした体験型民泊の創出:
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ターゲットを明確化: 大浦崎公園キャンプ場や周辺の自然を楽しむファミリー、大人数グループ、企業研修、ワーケーション、サイクリングやツーリング愛好家など、特定の趣味を持つ層に絞る。
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広大なスペースを活かす: BBQ設備、焚き火スペース、広々としたリビング・ダイニング、複数ベッドルームを整備し、グループでの滞在に特化させる。1階の広いスペースを多目的ホールやイベントスペースとして活用し、宿泊以外の収益源も確保する。
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地域連携: 地元の漁師体験、サイクリングツアーガイドの手配、近隣の温泉施設との提携など、音戸町ならではの体験プログラムを提供する。
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高品質な改装と施設の充実:
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「改装済み」を鵜呑みにせず、民泊に必要な水回り(特に複数設置可能なシャワールームやバスルーム、機能的なキッチン)、寝具、共有スペースを徹底的に整備する。
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鉄骨造の建物の良さを活かし、モダンで開放的な空間を創り出す。
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効率的な運営とコスト管理:
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無人チェックイン・アウトシステムを導入し、人件費を抑制する。
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清掃は地元住民との連携や、清掃業者との長期契約でコストを最適化する。
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駐車場が無料であることをアピールし、車でのアクセスが便利な点を強調する。
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ターゲット特化型マーケティング:
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アウトドア系雑誌、ファミリー向け旅行サイト、企業研修専門サイト、サイクリング系ブログなど、ターゲット層が利用するメディアで集中的にプロモーションする。
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大浦崎公園キャンプ場や呉市観光案内所と連携し、地域の一員として協力体制を築く。
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この物件は、広大なスペースと「民泊おすすめ」という明示された用途により、**地方型大規模民泊となるポテンシャルを秘めています。**しかし、高額な敷金、広大な店舗スペースの改装費用、バスルーム新設費用といった初期投資、そして広島市中心部とは異なる集客戦略が求められます。改装範囲を正確に見極め、事業計画を緻密に立て、特定のニッチ市場を攻略できるかが、事業成功の鍵を握るでしょう。
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