物件情報
以下は今回診断する物件の概要です。
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物件名: 東京都江東区古石場1丁目 門前仲町駅 貸その他
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掲載元: OCN不動産
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住所: 東京都江東区古石場1丁目
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最寄り駅: 東京メトロ東西線 門前仲町駅 徒歩5分、JR京葉線 越中島駅 徒歩5分、東京メトロ有楽町線 月島駅 徒歩11分
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賃料: 770,000円
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管理費等: - (なしと仮定)
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敷金/礼金: 3ヶ月 (231万円) / 1ヶ月 (77万円)
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保証金/敷引・償却金: なし / -
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使用部分面積: 191.65㎡(約58坪)
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種別・構造: 貸その他・鉄骨4階建
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築年月(築年数): 1987年4月 (築38年4ヶ月)
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特記事項:
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民泊、宿泊事業、旅館業として利用可能!
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エアコン・駐輪場・バイク置き場あり(無料)
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定期借家 契約期間5年
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現況空、即時引渡可能
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駐車場: 有 無料(台数不明)
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初期費用: 敷金3ヶ月、礼金1ヶ月、初回保証料50〜100%、保険加入要、仲介手数料1ヶ月
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契約期間: 定期借家5年
詳細はこちらのURLをご参照ください: 物件詳細
民泊適正評価:都心好立地の魔力と、高額賃料の現実
この物件の民泊適正は「都心の一等地で、莫大な初期投資と高リスクを背負いながら、超高稼働率を維持できる上級者向けの物件」と評価します。立地は魅力的ですが、賃料と競争環境は非常に厳しい現実を突きつけます。
【メリットとして期待できる点】
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抜群の好立地:
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門前仲町駅徒歩5分: 東京メトロ東西線は、大手町、日本橋、茅場町といったビジネス街や、高田馬場、早稲田といった学生街に直結しており、観光客だけでなくビジネス客や長期滞在者にも訴求できます。
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複数駅・複数路線利用可能: 月島駅(有楽町線)や越中島駅(京葉線)も徒歩圏内で、都内主要スポットへのアクセスが非常に良好です。
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周辺環境: 門前仲町は歴史的な富岡八幡宮や深川不動堂があり、下町情緒が残る人気のエリア。飲食店も豊富で、観光客にとって魅力的な滞在先となり得ます。
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「民泊、宿泊事業、旅館業」利用可能: 事業としての利用を明確に許可している点は最大の強みです。旅館業法の許可も視野に入れられるため、180日制限のない運営も目指せます。
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広大な面積: 191.65㎡(約58坪)の広さは、大人数のグループや複数家族での利用に対応でき、高単価を設定しやすいでしょう。複数ユニットに分割して貸し出すことも検討できます。
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築浅(と比較して)の鉄骨4階建: 築38年ですが、鉄骨造の4階建であるため、木造よりは耐久性や遮音性が期待できます。
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無料駐車場・駐輪場・バイク置場: 都心で無料駐車場があるのは非常に希少価値が高く、特定の層(車での旅行者など)にアピールできます。
【致命的な欠点】高額な固定費と激しい競争、そして改装費の闇 好条件が並ぶ一方で、この物件には乗り越えなければならない大きな壁が存在します。
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賃料77万円という「超」高額な固定費: 毎月77万円の家賃は、民泊という日銭商売において、極めて重い負担です。1日あたりの家賃が約2.5万円にもなり、これを回収するためには、超高稼働率かつ超高単価を維持し続けなければ、即座に赤字転落となります。
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定期借家5年という期間: 5年という期間は、莫大な初期投資を回収するにはやや短く、更新できないリスクも考慮すると事業計画の不確実性が高まります。
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改装費用の不透明性: 「貸その他」という種別であり、内装の様子が不明です。住居やホテルとして機能させるためには、水回り(浴室、トイレ、キッチン)の増設・改修、間取り変更、内装(壁、床、照明)、家具・家電の導入など、数千万円単位の初期投資がほぼ確実に必要になります。特に旅館業許可を目指す場合は、より厳しい設備基準を満たすための費用が膨大になるでしょう。
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東京の民泊市場の超激戦区: 門前仲町周辺は人気のエリアであり、ビジネスホテルや他の民泊施設が多数存在します。競争が激しいため、差別化できる明確な強みや、高い集客力がないと、稼働率を維持するのは至難の業です。
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消防法・建築基準法のクリア: 4階建、191㎡という規模の場合、消防法や建築基準法に基づく設備基準が厳しく、それらのクリアのための費用や時間も考慮に入れる必要があります。
契約前に確認するポイント
この物件で民泊運営に踏み切るなら、以下の点を徹底的にクリアにしてください。
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内装状況と、改装費用の詳細な見積もり:
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必ず内覧を行い、現状の内装、設備(水回り、電気配線など)の状況を徹底的に確認する。
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民泊(特に旅館業)として機能させるために必要な工事の範囲、消防法・建築基準法への適合工事、そしてそれにかかる具体的な費用を複数社から見積もりを取り、全て借主負担であることを覚悟する。
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写真がないため、現状が不明であり、費用が青天井になるリスクを認識すること。
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定期借家契約の詳細と更新の可能性:
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5年契約終了後の更新の有無、更新料、更新時の賃料改定など、契約更新に関する条件を貸主と明確に確認し、書面に残す。
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旅館業許可取得の実現可能性と費用・期間:
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所管の保健所や行政書士に相談し、この物件で旅館業法の許可が取得可能か、そのために必要な改装・設備投資、申請にかかる期間と費用を具体的に確認する。
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旅館業許可が取得できない場合、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく年間180日制限での運営となるため、収益シミュレーションに大きな影響が出ます。
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消防法・建築基準法への適合:
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管轄の消防署や建築指導課に相談し、必要な設備(自動火災報知設備、誘導灯、避難器具、防火管理者選任など)とその費用、必要な工事を確認する。
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周辺地域の宿泊施設の競合分析とターゲット設定:
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門前仲町周辺のホテル、既存民泊施設の料金帯、稼働率、ターゲット層を徹底的にリサーチする。
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この物件がどのような層(例: 富裕層、長期滞在ビジネス客、多人数グループ、インバウンドVIPなど)に響くのか、具体的なターゲットと、競合に勝つための明確なコンセプトを策定する。
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周辺地域の平均稼働率
東京の主要観光地やビジネス街に近いエリアの民泊稼働率は非常に高く、80%〜90%以上を維持している施設も少なくありません。門前仲町も観光地としての魅力があるため、潜在的な需要は高いでしょう。しかし、その分競争も激しく、ただ「民泊」として貸し出すだけでは高い稼働率を維持できません。明確なコンセプトと質の高いサービスを提供できるかが鍵となります。 特に77万円という賃料を回収するためには、平均稼働率90%以上を目指す必要があるでしょう。
運営した場合の想定年間利益(極めて悲観的なシナリオ)
賃料77万円という「超」高額な固定費と、改装費用(数千万円レベル)を考えると、収益を出すのは極めて困難であり、赤字のリスクが非常に高いです。
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月額賃料: 770,000円
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年間賃料: 770,000円 × 12ヶ月 = 9,240,000円
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初期費用:
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敷金3ヶ月(231万円) + 礼金1ヶ月(77万円) + 初回保証料(77万円と仮定) + 仲介手数料1ヶ月(77万円) + 保険(約5万円) = 約467万円
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改装費用+家具家電備品+旅館業許可関連費用: 「貸その他」の物件を旅館業として運営できるレベルに改修し、質の高い家具・家電・リネン類を揃える費用は、最低でも2,000万円〜5,000万円以上と見積もるべきです。特に水回りや消防設備の設置費用は高額になります。
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合計初期現金支出(概算): 467万 + 2000万 = 約2,467万円〜(これに加えて1ヶ月目の家賃)
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平均宿泊単価: 広さと立地を考慮し、1泊1組60,000円(この単価で高稼働を維持するのは相当な挑戦)
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年間営業可能日数: 365日(旅館業許可取得を前提とした場合)
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想定稼働率: 85%(都心好立地での高目標値)
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年間想定稼働日数: 365日 × 0.85 = 310日
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年間想定売上: 60,000円 × 310日 = 18,600,000円
ここから諸経費を差し引きます。
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プラットフォーム手数料: 売上の約10% = 1,860,000円
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清掃費・消耗品費: (1回15,000円として、310回分、大型物件は清掃費が高い) = 4,650,000円
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光熱費・通信費: (広さがあるため、月10万円と仮定) = 1,200,000円
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修繕積立費・管理費・その他雑費: (築古リスク考慮し、月10万円と仮定) = 1,200,000円
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運営代行費(アウトソースする場合): 売上の20-30% = 3,720,000円〜5,580,000円 (ここでは自力運営と仮定し含まず)
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年間総費用(賃料含む): 9,240,000円 (賃料) + 1,860,000円 (手数料) + 4,650,000円 (清掃) + 1,200,000円 (光熱費) + 1,200,000円 (その他) = 18,150,000円
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想定年間利益(税・初期費用回収前): 18,600,000円 (売上) - 18,150,000円 (総費用) = 450,000円
この計算では、年間で約45万円の黒字となりました。これは非常に高い稼働率と単価を維持できた場合であり、初期投資(2,000万円以上)を回収するには50年以上かかる計算になります。実際には、賃料が77万円もするため、少しでも稼働率や単価が落ちれば、瞬く間に赤字に転落する非常にリスクの高い物件です。
想定利益が低い場合の改善するためのアイデア
上記の通り、この物件で民泊として安定的な利益を出すことは極めて困難であり、通常のビジネスセンスでは「見送るべき」としか言いようがありません。それでも挑戦したいというのであれば、超富裕層向けや超ニッチなターゲット設定、そして圧倒的な差別化戦略が必須です。
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「最高級体験」への特化:
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ラグジュアリー民泊: 内装に数千万円をかけ、超高級ホテル並みの設備とサービス(専属シェフ、コンシェルジュ、送迎など)を提供し、1泊数十万円〜の単価を設定する。ターゲットはVIPや富裕層。
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テーマ型民泊: 日本文化体験(茶道、書道、着物など)を組み込んだ特別な滞在を提供し、体験に価値を見出す層に訴求する。
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MICE(会議、研修)利用: 広さを活かし、都心での企業研修や少人数イベントの開催場所として貸し出す。
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多角的な収益源の確保:
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イベントスペース・撮影スタジオ併用: 宿泊以外の時間帯や閑散期に、イベントスペースや撮影スタジオとして時間貸しする。
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長期滞在ビジネス向けサービス: リモートワーク環境を整備し、数週間〜数ヶ月単位の長期滞在ビジネス客向けに割引プランを提供する。
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徹底したコスト管理と運営の効率化:
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自力運営の徹底: 清掃や管理業務を可能な限り自力で行い、運営代行費用を削減する。
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スマートホーム化: IoTデバイスを活用し、効率的なチェックイン/アウト、照明・空調管理、セキュリティを実現する。
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この物件は、都心の一等地という魅力的な立地と「民泊可能」という条件を持つ一方で、賃料77万円という圧倒的な固定費と、改装費用の不透明性、そして激しい競争という三重苦を抱えています。 あなたは、この物件がもたらす「都心の一等地の夢」と「莫大なコストとリスクの現実」の間で、民泊ビジネスを成功させるための、他に類を見ない戦略と、それを実行する莫大な資金力を持っていますか?