物件情報
以下は今回診断する物件の概要です。
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物件名: 山梨県中巨摩郡昭和町河西 貸店舗(建物一部)
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掲載元: OCN不動産
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住所: 山梨県中巨摩郡昭和町河西
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最寄り駅: 身延線 常永駅 徒歩18分、小井川駅 徒歩24分
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賃料: 90,000円
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管理費等: なし
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敷金/礼金: 1ヶ月分 / 1ヶ月分
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使用部分面積: 130.51㎡
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間取り: 不明(貸店舗)
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種別・構造: 貸店舗(建物一部)・ブロック造1階/2階建 (メゾネット)
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築年月(築年数): 1970年10月 (築54年10ヶ月)
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特記事項:
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民泊も相談可能!
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イオンモール甲府昭和店から徒歩10分!
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駐車スペース広々!無料駐車場あり
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浴室が母屋とは別の離れにある
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現状渡し
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メゾネット
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設備: バス・トイレ別・トイレ・洗濯機置場・室内洗濯機置き場
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初期費用: 敷金1ヶ月、礼金1ヶ月、初回保証料:賃料の100%(90,000円)、保険加入要、仲介手数料:1.1ヶ月、更新事務手数料:新賃料の25%(別途消費税)、再契約料:新賃料の1ヶ月分(別途消費税)
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契約期間: 3年
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現況: 空室(即時引渡可能)
詳細はこちらのURLをご参照ください: 物件詳細
民泊適正評価:広さは武器か、維持費の足かせか?そして「離れ浴室」の衝撃!
この物件の民泊適正は「よほどの戦略と資金力がなければ厳しい」という評価に、さらに「離れ浴室という大きなハードル」が加わります。広さと安価な賃料、民泊相談可能という言葉に惑わされてはいけません。
【メリットとして期待できる点】
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広さ: 130.51㎡(約40坪)という広さは、大人数のグループや家族旅行に魅力的です。メゾネットタイプもユニークさを出せるかもしれません。
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賃料9万円・管理費なし: 築年数を考慮しても、この広さで月9万円は安価です。固定費を抑えられる点は大きなメリット。
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無料駐車場完備: 車社会の地方において、無料で広々とした駐車場は非常に重要な要素です。
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「民泊相談可能」: これも大きなアドバンテージ。交渉次第で許可が下りれば、一歩前進です。
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イオンモール甲府昭和店徒歩10分: 買い物や食事には便利ですが、観光客を惹きつける施設ではありません。
【致命的な欠点1】「現状渡し」と「築54年」の重い現実 最も深刻なのは「現状渡し」という条件と築54年という古さです。
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莫大な改装費用: 貸店舗を民泊施設として機能させるためには、水回り(バス・トイレ・キッチン)の全面改修、間取り変更、居住空間としての内装(壁、床、照明)、家具・家電の導入など、数百万円単位の初期投資がほぼ確実に必要になります。特に貸店舗は住居に必要な設備が不足していることが多く、その設置費用は想像以上に高額になるでしょう。
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安全性と快適性の問題: 築54年のブロック造は、耐震性が旧耐震基準の可能性が高く、大地震時の安全性が懸念されます。また、断熱性や防音性も現代の基準には遠く、冬は寒く夏は暑い、生活音が響きやすいといった問題が発生し、ゲストの満足度低下に直結します。
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維持管理費用: 古い建物であるため、給排水管の劣化、電気配線の老朽化、屋根や外壁の補修など、予期せぬ修繕費用が頻繁に発生するリスクが高いです。これらが「借主負担」となる可能性を考えると、ランニングコストが青天井になる恐れがあります。
【致命的な欠点2】「離れにある浴室」という宿泊体験のハードル 浴室が母屋とは別の離れにあるという点は、ゲストの宿泊体験において非常に大きなマイナス要素です。
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利便性の低下: 特に寒い時期や雨の日など、天候が悪い場合にゲストは体を冷やしたり、濡れたりしながら移動することになります。夜間の移動も不便です。
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プライバシーの問題: 浴室までの移動中に、他人の目を気にするゲストもいるでしょう。
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清掃・管理の複雑化: 離れの浴室も清掃・メンテナンスが必要となり、運営の手間が増えます。冬場の凍結防止なども考慮が必要です。
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写真での訴求難易度: 魅力的に見せるのが非常に難しく、予約サイトで正直に記載すれば、それが予約をためらう大きな要因になります。隠せばクレームに繋がりかねません。
【集客と立地の課題】
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常永駅徒歩18分: 地方で駅徒歩18分は「駅近」とは言えません。ほぼ車での移動が必須となる距離です。
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観光地としての魅力: 山梨県は観光資源が豊富ですが、昭和町は「甲府市郊外のベッドタウン・商業地域」という性格が強く、それ自体が観光客を呼び込む場所ではありません。富士山や甲府中心部、温泉地などからは距離があり、アクセスに不便を感じる旅行者もいるでしょう。
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競争激化: 山梨県全体では民泊施設が増加傾向にあり、特に富士五湖周辺などの人気エリアに集中しています。昭和町で競争に打ち勝つための明確な「強み」が必要です。
契約前に確認するポイント
この物件で民泊運営に踏み切るなら、以下の点を徹底的にクリアにしてください。
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「民泊相談」の具体的な内容: 貸主がどこまで民泊利用を許可するのか、事業用としての賃料アップの有無、契約期間中の規約変更の可能性など、書面で明確な合意を得ることが必須です。
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改装工事の全貌と見積もり(特に水回り): 専門の工務店に依頼し、貸店舗から民泊施設への改修に必要な工事の範囲、消防法への適合工事、そしてそれにかかる具体的な費用を複数社から見積もりを取りましょう。母屋に浴室を新設する場合の費用と工期も必ず見積もりに含めてください。それが無理であれば、離れ浴室の改修費用を細かく算出する必要があります。
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耐震診断と補強の必要性: 築年数を考えると、耐震診断は強く推奨されます。もし耐震補強が必要な場合、その費用は誰が負担するのか、貸主との交渉が必要です。
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消防法への適合: 民泊運営には消防法に基づく設備(自動火災報知設備、消火器、誘導灯など)の設置が義務付けられています。管轄の消防署に相談し、必要な設備とその費用を確認してください。
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運営形態と人員計画: 130㎡超の広さの清掃や管理は重労働です。特に離れ浴室の清掃・管理の手間とコストも加味して、自力で行うか、外部委託するか、費用を含めて具体的に計画を立てましょう。
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周辺地域の観光データとターゲット設定: 昭和町周辺の観光需要、イベント情報、宿泊施設の種類と価格帯などを徹底的にリサーチし、この物件がどのような層(例: 家族旅行、大人数グループ、ワーケーション、地元イベント参加者など)に響くのか、具体的なターゲットとコンセプトを明確にしましょう。
周辺地域の平均稼働率
山梨県全体の民泊稼働率は、富士五湖エリアなど観光客が集中する地域は高いですが、甲府市近郊の昭和町エリアは観光客の宿泊需要が限定的です。年間平均稼働率は、主要観光地と比較して低く、30%〜50%程度で推移する可能性が高いでしょう。イベント開催時や特定のシーズンを除けば、閑散期には稼働率が大きく落ち込むことを覚悟する必要があります。離れ浴室のマイナス点を考慮すると、さらに稼働率が落ち込む可能性もあります。
運営した場合の想定年間利益(極めて悲観的なシナリオ)
賃料は抑えられていますが、初期投資と地方の集客難、そして離れ浴室という大きなデメリットを考慮すると、利益を出すのは非常に困難です。
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月額賃料: 90,000円
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年間賃料: 90,000円 × 12ヶ月 = 1,080,000円
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初期費用:
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敷金1ヶ月 + 礼金1ヶ月 = 180,000円
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初回保証料 = 90,000円
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仲介手数料 = 99,000円
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保険 = 15,000円/2年
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貸店舗改装費用+家具家電備品+浴室の改修/新設費用: 最低でも300万円〜700万円(広さと「現状渡し」、そして浴室問題を解決するには大幅な費用増が見込まれます)
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合計初期現金支出(概算): 約350万円〜800万円(これに加えて1ヶ月目の家賃)
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平均宿泊単価: 広さを考慮し、1泊1組25,000円(この地域でこの価格は強気だが、単価を上げないと回収不能なため。ただし、離れ浴室のマイナスで設定は困難)
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年間営業可能日数: 180日(住宅宿泊事業法による上限)
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想定稼働率: 30%(広さ、立地、そして離れ浴室のマイナスを考慮した、より厳しい目標値)
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年間想定稼働日数: 180日 × 0.30 = 54日
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年間想定売上: 25,000円 × 54日 = 1,350,000円
ここから諸経費を差し引きます。
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プラットフォーム手数料: 売上の約10% = 135,000円
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清掃費・消耗品費: (1回8,000円として、54回分。離れ浴室の清掃手間も考慮) = 432,000円
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光熱費・通信費: (広さ、築年数、離れ浴室の暖房・給湯費用も考慮し、月3万円と仮定) = 360,000円
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修繕積立費・保険料: (築古のため、月2.5万円と仮定) = 300,000円
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年間総費用(賃料含む): 1,080,000円 (賃料) + 135,000円 (手数料) + 432,000円 (清掃) + 360,000円 (光熱費) + 300,000円 (修繕費) = 2,307,000円
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想定年間利益(税・初期費用回収前): 1,350,000円 (売上) - 2,307,000円 (総費用) = ▲957,000円
この計算では、年間で約95万円の赤字という結果になりました。初期投資(数百万単位)を回収するどころか、年間の運営だけでも大きな赤字に陥る可能性が非常に高いです。賃料が安くても、改装費、維持費、そして集客の難しさ、加えて離れ浴室という大きなマイナスが重くのしかかります。
想定利益が低い場合の改善するためのアイデア(この物件での挑戦は茨の道)
上記の通り、この物件で民泊として安定的な利益を出すことは極めて困難です。それでも挑戦したいというのであれば、超ニッチなターゲット設定と圧倒的な独自性、そして地元との連携が不可欠になります。特に離れ浴室というデメリットを逆手に取る発想が求められます。
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「非日常体験」への特化と離れ浴室のポジティブ転換:
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「グランピング風」「古民家風」の風呂体験: 離れ浴室を単なる不便な風呂ではなく、趣のある「五右衛門風呂」や「露天風呂風」に改修し、非日常体験の一つとして強く打ち出す。ただし、多額の改装費用がかかる。
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「サウナ小屋」としての利用提案: 離れを本格的なサウナ小屋として改修し、サウナ好きをターゲットにする。水風呂や休憩スペースも整備。これも費用が膨大。
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地域文化体験とセット: 山梨の自然や文化と結びつけ、「自然の中での湯浴み体験」として風呂の不便さを昇華させる。
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徹底したコスト管理とセルフ化:
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DIYの限界を見極める: 改装費を抑えるためにDIYを検討するにしても、水回りや電気配線、耐震補強などプロに任せるべき部分は妥協しない。それ以外の内装は、可能な限り自身で行い、徹底的に費用を抑える。特に離れ浴室への給排水・給湯設備、暖房の維持費用は念入りに試算すること。
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清掃のセルフサービス化: ゲストに退去時の簡易清掃を依頼することで、清掃費用を削減する。ただし、清掃レベルの維持が課題。離れ浴室の清掃負担は通常より増大すると考えるべき。
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無人運営システム: チェックイン/アウトはスマートロックなどで完全に無人化し、人件費を最小限に抑える。
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多角的な集客戦略と地域連携:
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特定のコミュニティへのアピール: DIY好き、サークル活動、研修利用など、特定のニーズを持つグループに直接アプローチする。離れ浴室という特殊性を理解し、受け入れてくれる層を見つけることが重要。
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SNSマーケティング: 物件の魅力を伝えるだけでなく、山梨県や昭和町の魅力を発信し、物件への興味を喚起する。離れ浴室のデメリットを逆手に取った写真や動画(例:「冬の星空を見ながら、離れのお風呂へGO!」など)で、ユニークさを強調する。
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この物件は、安易に「民泊可」という言葉に飛びつくと、初期投資の回収すらままならない「負の遺産」になりかねません。広さと賃料の安さは魅力的ですが、築年数、現状渡し、そして地方の集客という三重苦に加えて、離れ浴室という大きなハンデを乗り越えるには、並大抵ではない努力と、何よりも「損をしても構わない」という覚悟が必要です。 あなたは、この茨の道を切り拓く準備ができていますか?