物件情報
以下は今回診断する物件の概要です。
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物件名: 赤江事務所(店舗事務所兼自宅)
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掲載元: LIFULL HOME'S
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住所: 宮崎県宮崎市大字赤江75-5
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最寄り駅: JR宮崎空港線 宮崎空港駅 徒歩14分
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賃料: 275,000円
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管理費等: - (なしと仮定)
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敷金/礼金: 500,000円 / 275,000円
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保証金/敷引・償却金: 275,000円 / -
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面積: 205.78㎡
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間取り: 不明(店舗事務所兼自宅)
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所在階/階数: - / 2階建
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建物構造: 鉄骨造
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築年月(築年数): 不明(写真から判断すると、それなりに築年数が経過しているように見える)
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特記事項:
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民泊利用、事務所、店舗系サロンなどもご相談可能!
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内装が非常に綺麗(写真より判断)
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駐車場あり(6台)
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即引渡し可(現況空家)
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ペット不可
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津波・洪水浸水想定区域外
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初期費用: 敷金50万円、礼金27.5万円、保証金27.5万円、仲介手数料27.5万円、住宅保険要
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契約期間: -(不明)
詳細はこちらのURLをご参照ください: 物件詳細
民泊適正評価:内装の綺麗さは好材料、でも課題は山積み
この物件の民泊適正は「工夫次第で可能性はあるが、資金と戦略が必須」という評価です。内装が綺麗である点は大きなメリットですが、それだけで事業が成功するわけではありません。
【メリットとして期待できる点】
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広大な面積: 205.78㎡(約62坪)もの広さは、大人数グループや複数家族での利用に特化でき、高単価を設定しやすいでしょう。複数ユニット(フロアや部屋を区切るなど)での運営も視野に入ります。
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駐車場6台分完備: 車社会の宮崎において、この台数の無料駐車場は非常に大きな強みです。ファミリー層やレンタカー利用の観光客には魅力的です。
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「民泊利用相談可能」: これが最大の魅力。事業として民泊を許可してくれる物件は希少です。
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内装の綺麗さ: 写真を見る限り、内装は非常に綺麗に保たれており、大規模な改装費用を大幅に抑えられる可能性が高いです。これにより、初期投資のハードルが下がります。
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津波・洪水浸水想定区域外: 自然災害リスクの低いエリアであることは、ゲストの安心感に繋がり、保険などの面でもメリットがあります。
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宮崎空港駅徒歩14分: 空港に近い立地は、深夜便・早朝便利用のゲストや、空港を拠点に宮崎観光をするゲストに訴求できる可能性があります。
【克服すべき課題】「店舗事務所兼自宅」の機能と集客の壁 内装が綺麗であるというメリットがある一方で、物件の特性と立地には依然として課題があります。
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「店舗事務所兼自宅」という機能: 内装は綺麗でも、キッチンや浴室、寝室などの生活設備が民泊として十分な数と質を備えているかは要確認です。特にオフィススペースや店舗部分を居住空間として活用するには、レイアウト変更や最低限の設備追加が必要となる可能性があり、その費用は依然として発生します。
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築年数不明によるリスク: 築年月が不明なのは不安要素です。写真から推測するに、それなりの年数が経過しているように見え、古い場合は耐震性や隠れた設備老朽化のリスクがあります。
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賃料27.5万円の回収: 月額27.5万円の固定費は、宮崎という地方都市の民泊においては決して安くありません。これを回収し利益を出すためには、相当な高稼働率と高単価を維持する必要があります。
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立地と集客: 宮崎空港駅は空港へのアクセスは良いものの、宮崎市内の中心部や主要観光地からは離れています。徒歩14分という距離も、公共交通機関利用の観光客にはやや不便です。宮崎県の観光客は車移動が中心ですが、目的地がこの物件周辺であるとは限りません。イベント需要やビジネス需要をどう取り込むかが課題です。
契約前に確認するポイント
この物件で民泊運営に踏み切るなら、以下の点を徹底的にクリアにしてください。
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「民泊利用相談」の具体的な内容と契約条件:
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貸主がどこまで民泊利用を許可するのか、事業用としての賃料アップの有無、契約期間中の規約変更の可能性など、書面で明確な合意を得ることが必須です。
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「店舗事務所兼自宅」を民泊として利用する場合の、賃貸借契約書の内容を弁護士などの専門家に確認してもらうことを強く推奨します。
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現況の内装と設備状況の詳細:
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写真では綺麗でも、民泊に必要な水回り(風呂、トイレ、キッチン)の数と状態、寝室となる部屋の数と広さ、収納、空調設備、インターネット環境などを、必ず現地で詳細に確認する。
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足りない設備(例えば、キッチンのコンロ数、冷蔵庫の大きさ、洗濯機の有無など)や追加したい設備があれば、その購入・設置費用を見積もる。
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築年数の確認と建物の状態:
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貸主から正確な築年数を聞き出す。もし古い場合は、耐震診断の有無や、過去の修繕履歴などを確認する。
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電気配線、給排水管など、目に見えない部分の老朽化による将来的な修繕費用も考慮に入れる。
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消防法への適合:
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200㎡を超える物件であり、民泊運営には消防法に基づく設備(自動火災報知設備、誘導灯、消火器、防火管理者選任など)の設置が義務付けられています。宮崎市管轄の消防署に相談し、必要な設備とその費用、必要な工事などを確認する。
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宮崎市の条例・規制:
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宮崎県および宮崎市の住宅宿泊事業に関する条例や規制(年間営業日数制限、管理体制、トラブル対応、近隣住民への説明義務など)を確認し、全て満たせるか確認する。
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周辺地域の観光データとターゲット設定:
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宮崎市、特に空港周辺の観光需要、イベント情報、宿泊施設の種類と価格帯などを徹底的にリサーチし、この物件がどのような層(例: 複数家族、ゴルフ旅行グループ、ビジネス出張者、空港利用者など)に響くのか、具体的なターゲットとコンセプトを明確にしましょう。
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周辺地域の平均稼働率
宮崎県全体の民泊稼働率は、主要観光地やイベント開催時を除けば、全国平均よりは低い傾向にあります。宮崎空港周辺という立地は、ビジネス利用やゴルフ旅行など、特定の需要はありますが、通年の観光客が常に多いエリアではありません。この広大な物件で高稼働率を維持するには、相当な努力が必要です。年間平均稼働率は**40%〜60%**で推移すると予測されます。
運営した場合の想定年間利益
内装が綺麗であることで初期の改装費が抑えられる可能性はあるものの、賃料27.5万円という固定費と、集客の難しさを考えると、依然として利益を出すのは非常に困難であり、赤字のリスクは高いです。
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月額賃料: 275,000円
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年間賃料: 275,000円 × 12ヶ月 = 3,300,000円
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初期費用:
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敷金50万 + 礼金27.5万 + 保証金27.5万 + 仲介手数料27.5万 = 132.5万円
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住宅保険(約2万円)
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改装費用+家具家電備品: 内装は綺麗でも、店舗事務所部分の改装、家具家電の購入、消防設備費用などで最低でも200万円〜500万円は見積もるべきです。特に、民泊に必要な質の高いベッドやリネン、家電、食器類は意外と費用がかかります。
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合計初期現金支出(概算): 132.5万 + 2万 + 200万 = 約334.5万円〜(これに加えて1ヶ月目の家賃)
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平均宿泊単価: 大型物件として、1泊1組35,000円(この地域で高稼働を狙うには強気な設定だが、これでなければ利益が出ない)
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年間営業可能日数: 180日(住宅宿泊事業法による上限)
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想定稼働率: 50%(広さ、立地を考慮した、現実的な目標値)
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年間想定稼働日数: 180日 × 0.50 = 90日
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年間想定売上: 35,000円 × 90日 = 3,150,000円
ここから諸経費を差し引きます。
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プラットフォーム手数料: 売上の約10% = 315,000円
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清掃費・消耗品費: (1回8,000円として、90回分) = 720,000円
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光熱費・通信費: (広さがあるため、月3万円と仮定) = 360,000円
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修繕積立費・その他雑費: (月2万円と仮定) = 240,000円
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年間総費用(賃料含む): 3,300,000円 (賃料) + 315,000円 (手数料) + 720,000円 (清掃) + 360,000円 (光熱費) + 240,000円 (その他) = 4,935,000円
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想定年間利益(税・初期費用回収前): 3,150,000円 (売上) - 4,935,000円 (総費用) = ▲1,785,000円
この計算では、年間で約178万円もの赤字という悲惨な結果になりました。初期投資(数百万円〜)を回収するどころか、年間の運営だけでも莫大な赤字に陥る可能性が非常に高いことを示唆しています。内装が綺麗であるというメリットがあっても、賃料の高さと集客の難しさが重くのしかかります。
想定利益が低い場合の改善するためのアイデア
上記の通り、この物件で民泊として安定的な利益を出すことは極めて困難であり、通常のビジネスセンスでは「見送るべき」としか言いようがありません。それでも挑戦したいというのであれば、多角的な収益源の確保と、ターゲットの徹底的な絞り込みが必要です。
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「多目的施設」としての運営:
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民泊+イベントスペース: 広々としたスペースを活かし、宿泊だけでなく、地域のイベント、ワークショップ、小規模なパーティー会場などとしても貸し出す。
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民泊+ワーケーション施設: 高速Wi-Fiや個室を整備し、長期滞在のワーケーション需要を取り込む。宮崎の豊かな自然環境を活かし、リフレッシュしながら仕事ができる環境をアピール。
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民泊+レンタサイクル/カーサービス: 広大な駐車場を活かし、宮崎観光に必須の移動手段を組み合わせたパッケージを提供する。
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徹底的なコスト管理とセルフ化:
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内装活用の徹底: 綺麗な内装を最大限に活かし、家具家電以外の新規導入を最小限に抑える。
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清掃のセルフサービス化: ゲストに退去時の簡易清掃を依頼することで、清掃費用を削減する。ただし、清掃レベルの維持が課題。
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無人運営システム: チェックイン/アウトはスマートロックなどで完全に無人化し、人件費を最小限に抑える。
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宮崎ならではの魅力と連携:
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ゴルフ・スポーツ合宿特化型: 宮崎はゴルフ場が豊富。大人数で宿泊し、ゴルフ合宿やスポーツ合宿の拠点として利用してもらう。提携するゴルフ場などがあればさらに有利。
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食材付き体験型民泊: 宮崎の新鮮な海の幸、山の幸をBBQなどで楽しめるよう、食材の提供サービスなどを加える。広い庭があればBBQスペースを整備する。
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空港利用客への訴求強化: 宮崎空港からのアクセスが良い点を最大限にアピールし、乗り継ぎや早朝・深夜便利用のゲストに特化したサービス(送迎など)を提供する。
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この物件は、「民泊利用相談可能」という言葉に誘われがちですが、その実態は高額な固定費と、地方での集客という重い課題を抱える、依然としてリスクの高い投資です。内装が綺麗であるというメリットがあっても、それだけで賃料27.5万円と初期投資を回収し、利益を出すのは至難の業でしょう。 あなたは、この物件の「店舗事務所兼自宅」という特性と、内装の綺麗さを最大限に活かし、宮崎で成功する独自の民泊ビジネスモデルを構築する自信がありますか?