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【三重・四日市市】築91年の古民家で「レストラン民泊」は夢か幻か?富田駅徒歩11分、広々空間のリアルを辛口診断!

物件情報

 

以下は今回診断する物件の概要です。

  • 物件名: house四日市市東富田 すてきな古民家

  • 掲載元: LIFULL HOME'S

  • 住所: 三重県四日市市東富田町

  • 最寄り駅: JR関西本線 富田駅 徒歩11分

  • 賃料: 99,000円

  • 管理費等: - (なしと仮定)

  • 敷金/礼金: 無 / 2ヶ月 (19.8万円)

  • 保証金/敷引・償却金: - / - (なしと仮定)

  • 面積: 158.66㎡(約48坪)

  • 間取り: 不明(古民家)

  • 所在階/階数: - / 2階建

  • 建物構造: 木造

  • 築年月(築年数): 1935年1月 (築91年)

  • 特記事項:

    • 大正15年前後に建てられた立派な古民家!レストランや民泊へ。

    • 駐車場あり(無料、敷地内1台、近隣月極駐車場複数台あり)

    • フリーレント2ヶ月

    • 建ぺい率オーバーしています。

    • 現況空家、引渡し相談

  • 初期費用: 礼金2ヶ月(19.8万円)、仲介手数料(9.9万円+税)、住宅保険要

  • 契約期間: 2年間

詳細はこちらのURLをご参照ください: 物件詳細


 

民泊適正評価:築91年のロマンか、それとも重荷か?

 

 

この物件の民泊適正は、「古民家への深い愛と、莫大な資金力、そして建築に関する知識がなければ、非常に厳しい」 と評価せざるを得ません。「すてきな古民家」という言葉の裏には、築91年という年月がもたらす現実が隠されています。

 

【メリットとして期待できる点】

  • 「古民家」というコンセプト: 築91年の歴史ある佇まいは、現代の建築にはない唯一無二の魅力です。古民家ステイを求める国内外のニッチな層には強く訴求できる可能性があります。

  • 広大な面積: 158.66㎡(約48坪)の広さは、大人数のグループや複数家族での利用に最適で、高単価を設定しやすいでしょう。

  • 賃料9.9万円・管理費なし: この広さの物件で10万円を切る賃料は非常に安価です。固定費を抑えられる点は大きなメリット。

  • 無料駐車場完備: 車社会の地方において、無料駐車場が複数台分あるのは非常に重要です。

  • フリーレント2ヶ月: 初期費用を抑えられる点で、わずかながら助けになります。

  • 「レストランや民泊へ」: 貸主が事業利用に前向きであることは、契約交渉の上で有利に働くでしょう。

【致命的な欠点】築91年の「現状渡し」と法的な壁 最大のネックは、その築年数と「現状渡し」の古民家であること、そして「建ぺい率オーバー」という法的リスクです。

  • 莫大な改装費用: 築91年の木造建築は、配管、電気配線、屋根、床下、壁、断熱など、建物の構造自体に大規模な修繕が必要となる可能性が極めて高いです。特に民泊として安全かつ快適に利用できるようにするには、水回り(浴室、トイレ、キッチン)の全面改修・増設、耐震補強工事、断熱工事、防音対策など、数百万円どころか1000万円を優に超える初期投資がほぼ確実にかかります。古民家再生は、新築を建てるのと同等か、それ以上の費用がかかることも珍しくありません。

  • 耐震性の問題: 大正時代の建築であり、現行の耐震基準を満たしている可能性は低いです。大規模な耐震補強工事が必須となるでしょう。地震の多い日本において、ゲストの安全確保は最優先事項です。

  • 「建ぺい率オーバー」の法的リスク: 物件情報に「建ぺい率オーバーしています」と明記されているのは、非常に大きな懸念点です。これは、再建築時に同じ規模の建物を建てられない、売却時に買い手が見つかりにくい、金融機関からの融資が受けにくいなどのリスクをはらんでいます。また、行政指導の対象となる可能性もゼロではありません。民泊運営の許可申請にも影響する可能性があり、必ず事前に専門家(建築士、弁護士、行政書士)に相談し、法的リスクを十分に理解する必要があります。

  • 維持管理コスト: 古い建物は、定期的なメンテナンスや予期せぬ修繕費用が頻繁に発生します。夏場のカビ、冬場の結露、害虫対策など、ランニングコストが想像以上に高くなる可能性があります。

  • 立地と集客: 富田駅はJRの駅ですが、四日市市は工業都市であり、富田周辺は主要な観光地ではありません。名古屋からのアクセスは可能ですが、観光客がこのエリアに宿泊する明確な理由を見つけられるかが課題です。近隣に観光資源が乏しい場合、単なる「古民家」だけでは集客に限界があります。


 

契約前に確認するポイント

 

 

この物件で民泊運営に踏み切るなら、以下の点を徹底的にクリアにしてください。

  1. 「建ぺい率オーバー」に関する詳細な法的確認:

    • 専門の建築士や行政書士に相談し、この状態での民泊運営や将来的な改築・増築に関する法的リスクを徹底的に確認する。

    • 万が一、行政指導があった場合の対応や費用負担についても貸主と交渉し、書面で明確な取り決めを行う。

  2. 建物の詳細な診断と改装費用の見積もり:

    • 必ず専門の建築士や古民家再生の実績がある工務店に依頼し、建物全体の詳細な診断(耐震性、構造、電気、水道、ガス、屋根、床下など)を行ってもらう。

    • 民泊として必要な設備(キッチン、浴室、トイレの数と状態)の整備、耐震補強、断熱工事、内装工事など、全ての改修費用を複数社から見積もりを取り、全て借主負担であることを覚悟する。

  3. 「民泊利用」の具体的な条件と契約内容:

    • 貸主がどこまで民泊利用を許可するのか、事業用としての賃料アップの有無、契約期間中の規約変更の可能性など、書面で明確な合意を得ることが必須です。

  4. 消防法への適合:

    • 築年数の古い木造建築であるため、消防法の適用が非常に厳しくなります。消防署に相談し、必要な設備(自動火災報知設備、誘導灯、消火器、防火管理者選任など)とその費用、必要な工事などを確認する。

  5. 三重県および四日市市の条例・規制:

    • 住宅宿泊事業に関する条例や規制(年間営業日数制限、管理体制、トラブル対応、近隣住民への説明義務など)を確認し、全て満たせるか確認する。

  6. 周辺地域の観光データとターゲット設定:

    • 四日市市やその周辺の観光需要、イベント情報、宿泊施設の種類と価格帯などを徹底的にリサーチし、この古民家がどのような層(例: 古民家好き、歴史探訪、大人数グループ、地元の祭り参加者、バイク旅行者など)に響くのか、具体的なターゲットとコンセプトを明確にしましょう。


 

周辺地域の平均稼働率

 

 

三重県全体の民泊稼働率は、伊勢志摩地域や鈴鹿サーキット周辺など、特定の観光地やイベント開催時に集中し、それ以外のエリアは比較的低い傾向にあります。四日市市は工業都市であり、富田周辺も観光の中心地ではありません。この物件で高稼働率を維持するには、相当な努力が必要です。年間平均稼働率は**30%〜50%**で推移すると予測されます。特に「古民家」というコンセプトがどこまで集客に繋がるかが鍵です。

 

 

運営した場合の想定年間利益(極めて悲観的なシナリオ)

 

 

賃料は安価ですが、莫大な初期投資と築91年という維持コスト、そして集客の難しさを考えると、収益を出すのは非常に困難であり、赤字のリスクが極めて高いです。

  • 月額賃料: 99,000円

  • 年間賃料: 99,000円 × 12ヶ月 = 1,188,000円

  • 初期費用:

    • 礼金2ヶ月(19.8万円)、仲介手数料(約10.9万円)、住宅保険(約2万円)などが発生。

    • 古民家再生・改装費用+家具家電備品: 築91年の木造古民家を民泊仕様にするための費用は、最低でも1000万円〜3000万円以上と見積もるべきです。耐震補強、水回り(浴室、トイレ、キッチン)の全面改修、断熱工事、内装、家具家電など、古民家再生は想像を絶する費用がかかります。

    • 合計初期現金支出(概算): 19.8万 + 10.9万 + 2万 + 1000万 = 約1032.7万円〜(これに加えて1ヶ月目の家賃)

  • 平均宿泊単価: 古民家コンセプトと広さを考慮し、1泊1組30,000円(この地域でこの価格設定は強気だが、そうでなければ回収不能)

  • 年間営業可能日数: 180日(住宅宿泊事業法による上限)

  • 想定稼働率: 40%(古民家コンセプトと地方立地を考慮した、挑戦的な目標値)

  • 年間想定稼働日数: 180日 × 0.40 = 72日

  • 年間想定売上: 30,000円 × 72日 = 2,160,000円

ここから諸経費を差し引きます。

  • プラットフォーム手数料: 売上の約10% = 216,000円

  • 清掃費・消耗品費: (1回8,000円として、72回分) = 576,000円

  • 光熱費・通信費: (古民家は断熱性が低く、広いため、月3.5万円と仮定) = 420,000円

  • 修繕積立費・その他雑費: (築古のため、月3万円と仮定) = 360,000円

  • 年間総費用(賃料含む): 1,188,000円 (賃料) + 216,000円 (手数料) + 576,000円 (清掃) + 420,000円 (光熱費) + 360,000円 (その他) = 2,760,000円

  • 想定年間利益(税・初期費用回収前): 2,160,000円 (売上) - 2,760,000円 (総費用) = ▲600,000円

この計算では、年間で約60万円もの赤字という悲惨な結果になりました。初期投資(数千万単位)を回収するどころか、年間の運営だけでも大きな赤字に陥る可能性が非常に高いことを示唆しています。賃料が安くても、古民家再生の改装費用と維持コスト、そして集客の難しさが重くのしかかります。


 

想定利益が低い場合の改善するためのアイデア

 

 

上記の通り、この物件で民泊として安定的な利益を出すことは極めて困難であり、現在の想定では「見送るべき」としか言いようがありません。それでも挑戦したいというのであれば、超ニッチなターゲット設定、圧倒的な独自性、そして莫大な自己資金と覚悟が必要です。

  1. 「体験型」古民家民泊への特化:

    • 歴史・文化体験: 大正時代の趣を活かし、昔ながらの生活体験(囲炉裏体験、古民家での料理教室など)を提供する。地域の歴史や文化に興味がある層をターゲットにする。

    • 地元の食材を活かした食の体験: 「レストランも相談可」とあるように、地域の食材を使った料理体験や、宿泊客限定の食イベントなどを開催する。

    • ワーケーション+古民家: 高速Wi-Fiを整備し、静かで広々とした空間でクリエイティブな仕事や研修ができる環境をアピール。

  2. 多角的な収益源の確保:

    • 民泊+カフェ・レストラン: 普段はカフェやレストランとして営業し、夜間や特定の時期に民泊として貸し出す。これにより、民泊の180日制限に縛られず、通年の収益源を確保できます。ただし、飲食店営業許可取得のハードルや初期投資はさらに増大します。

    • イベントスペース貸し: 結婚式の前撮り、着物撮影会、展示会、ワークショップなど、広々とした古民家の空間を時間貸しする。

    • 地元との連携強化: 地元の観光協会、商店街、農家などと連携し、地域全体の魅力を発信することで、物件への誘客に繋げる。

  3. 徹底的なコスト管理と長期視点:

    • 自己資金での改装: 融資が難しい物件のため、改装費用はほぼ自己資金で賄う覚悟が必要です。

    • DIYの活用: 可能な範囲で自身や友人の協力を得てDIYを行い、人件費を削減する。ただし、専門的な工事(耐震、水回り、電気など)はプロに任せる。

    • 「負債」としての受け入れ: 最初から利益を追求するのではなく、地域の歴史的建造物を保存する「文化貢献」や、自己実現のための「ライフワーク」として捉える視点も必要になるかもしれません。

この物件は、「古民家再生」というロマンと「民泊事業」というビジネスが交差する、非常に挑戦的な案件です。賃料の安さやロマンに惹かれるかもしれませんが、築91年という現実、莫大な改装費用、そして「建ぺい率オーバー」という法的リスクは、甘い見通しを許しません。 あなたは、この物件に込められた歴史を未来へと繋ぎ、同時にビジネスとして成立させる「覚悟と戦略」を持っていますか?