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【愛媛・新居浜市】田園地帯の平屋3DKで民泊はアリかナシか?地方民泊のリアルを辛口診断

物件情報

 

 

以下は今回診断する物件の概要です。

  • 物件名: 144坪の広い敷地に建つ平屋3DK

  • 掲載元: ジモティー (投稿ID : 1ihcby)

  • 住所: 愛媛県新居浜市田の上

  • 賃料: 60,000円

  • 管理費等: 0円

  • 敷金/礼金: 1ヶ月分 / 1ヶ月分

  • 間取り: 3DK

  • 建物面積: 98.61㎡(約29.82坪)

  • 土地面積: 478.61㎡(約144.77坪)

  • 階建: 1階 / 1階 (平屋)

  • 築年月(築年数): 1985年3月 (築40年)

  • 特記事項:

    • 駐車スペース2台分あり

    • 広い裏庭付き

    • 壁紙・床修復済みのリフォーム住宅

    • 静かな環境で自然を感じる暮らし

    • ペット飼育・民泊運営もご相談可能

    • 建築関係者の私邸として使われていた


 

民泊適正評価:静かな環境は「武器」か「足かせ」か?

 

 

この物件の民泊適正は、正直なところ「条件付きで可能性あり」といった評価です。しかし、その「条件」は非常に厳しいものになるでしょう。

 

【メリットとして期待できる点】

  • リフォーム済み: 壁紙や床の修復済みは、初期の内装費を抑えられる点で大きなアドバンテージです。

  • 平屋・広い敷地: バリアフリーで移動しやすく、子供連れや高齢者にも喜ばれる可能性があります。広い裏庭は差別化ポイントになり得ます。

  • 駐車場2台: 車社会の地方においては、駐車場完備は必須条件であり、2台分あるのは高評価です。

  • 賃料6万円: 面積を考えると、賃料6万円は地方としては妥当なラインであり、家賃が高すぎて利益が出にくいという懸念は比較的少ないでしょう。

  • 築年数40年: 旧耐震基準の建物ですが、1981年の新耐震基準導入以降に建てられたため、現行の耐震基準に近い水準にある可能性があり、築50年超の物件よりは安心感があります。

【致命的な欠点】

立地と集客の壁 最大のネックは立地が観光地ではないという点です。新居浜市は工業都市であり、一般的な観光客が「泊まりたい」とわざわざ訪れる場所ではありません。ジモティーの記載にも「静かな環境で自然を感じる暮らし」とあるように、完全に居住用の物件であり、観光客をターゲットにした民泊としては集客が極めて難しいでしょう。

  • 「静かな環境」は「集客難」と同義: 都会の喧騒から離れたい層には響くかもしれませんが、その絶対数が少ないです。

  • 交通アクセス: 駅からの徒歩分数などが記載されていませんが、新居浜市の「田の上」という住所から推測するに、公共交通機関でのアクセスは不便な可能性が高いです。車がない旅行者には選択肢にすら入らないでしょう。

  • 競合との差別化: 新居浜市にはビジネスホテルや宿泊施設が既に存在します。これらの既存施設とどう差別化し、ゲストを呼び込むかが大きな課題です。

【その他の懸念点】

  • 「民泊運営もご相談可能」: 「可」ではなく「相談可能」であるため、貸主との交渉次第で許可が下りない可能性もあります。また、事業用としての賃料アップも考慮すべきです。

  • 築40年のリスク: リフォーム済みとはいえ、電気配線や給排水管など、目に見えない部分の老朽化は進んでいます。突発的な修繕費が発生するリスクは常にあります。


 

契約前に確認するポイント

 

 

この物件で民泊運営を検討するなら、以下の点を徹底的に確認してください。

  1. 立地詳細と集客対象の明確化:

    • 最寄りの主要駅やバス停からの具体的なアクセス(徒歩・車での所要時間)を確認する。

    • 周辺に観光スポットやビジネス需要があるか、具体的にリサーチする。

    • 「誰に」「どのような目的で」泊まってもらいたいのか、ターゲット層を明確にする。例えば、近隣の工場への出張者、特定のイベント参加者、Uターン・Iターン希望者の短期滞在など。

  2. 「民泊運営」の交渉と契約内容:

    • 貸主が「相談可能」としている具体的な条件(家賃アップの有無、契約期間、規約など)を詳細に確認する。

    • 民泊利用の許可を、必ず書面で賃貸借契約書に明記してもらう。

  3. 内装・設備状況の再確認:

    • リフォーム済みとはいえ、水回り(風呂・トイレ・キッチン)やエアコンなどの設備が、民泊利用に耐えうる状態か、実際に内覧して確認する。古い設備は故障リスクが高く、ゲストのクレームに直結します。

    • 寝具や家具家電、食器類など、民泊に必要な備品の購入費用を見積もる。

  4. 消防法への適合:

    • 住宅宿泊事業(民泊)として必要な消防設備(火災報知器、消火器、誘導灯など)の設置義務と費用を、新居浜市管轄の消防署に確認する。

  5. 地域の騒音・ゴミ出しルール:

    • 閑静な住宅地ゆえに、宿泊客の生活音やゴミ出しに関する近隣トラブルが発生しやすい可能性があります。地域住民への配慮と、明確なハウスルールの設定を検討する。

  6. 自治体への届出と規制:

    • 愛媛県および新居浜市の住宅宿泊事業に関する条例や規制(年間営業日数、管理体制など)を確認し、届出の要件を満たせるか確認する。


 

周辺地域の平均稼働率

 

 

愛媛県全体の民泊平均稼働率は、主要観光地である松山市や道後温泉周辺を除くと、決して高くありません。新居浜市単独でのデータは少ないですが、一般的な地方都市の民泊稼働率は、通年で30%〜50%程度に留まることが多いです。この物件の立地を考えると、仮にプロの運営代行に委託したとしても、平均稼働率を大きく上回ることは困難でしょう。繁忙期と閑散期の差も大きいと予想されます。

 

 

運営した場合の想定年間利益(極めて厳しいシナリオ)

 

 

賃料が6万円と抑えられていますが、地方での集客難を考慮すると、利益を出すのは非常に厳しいと予想されます。

  • 月額賃料: 60,000円

  • 年間賃料: 60,000円 × 12ヶ月 = 720,000円

  • 初期費用: 敷金6万円 + 礼金6万円 = 120,000円 (その他、家具・家電・備品、リフォーム不足箇所の改修費など数百万円かかる可能性あり)

  • 平均宿泊単価: 地方のファミリー向け平屋であることを考慮し、1組1泊12,000円(安価に設定しないと集客できない可能性も)

  • 年間営業可能日数: 180日(住宅宿泊事業法による上限)

  • 想定稼働率: 30%(かなり悲観的ながら現実的な数字)

  • 年間想定稼働日数: 180日 × 0.30 = 54日

  • 年間想定売上: 12,000円 × 54日 = 648,000円

ここから諸経費を差し引きます。

  • プラットフォーム手数料: 売上の約10% = 64,800円

  • 清掃費・消耗品費: (1回6,000円として、54回分) = 324,000円

  • 光熱費・通信費: (月1.5万円と仮定) = 180,000円

  • 修繕積立費・保険料: (月1万円と仮定) = 120,000円

  • 年間総費用(賃料含む): 720,000円 (賃料) + 64,800円 (手数料) + 324,000円 (清掃) + 180,000円 (光熱費) + 120,000円 (修繕費) = 1,408,800円

  • 想定年間利益(税・初期費用回収前): 648,000円 (売上) - 1,408,800円 (総費用) = ▲760,800円

この計算では、年間で約76万円の赤字という厳しい結果になりました。初期費用(家具家電や残りのリフォーム、届出費用など)を考慮すると、さらに赤字は膨らむでしょう。「家賃6万円」という数字の安さに惑わされてはいけません。地方の民泊は、安易な気持ちで手を出すと大火傷を負う可能性が高いのです。

 


 

想定利益が低い場合の改善するためのアイデア(この物件での挑戦)

 

 

上記の通り、この物件で一般的な民泊として利益を出すのは極めて困難です。それでも挑戦したいというのであれば、徹底した差別化とローコスト運営、そして地元との密着が不可欠になります。

  1. ターゲットを徹底的に絞り込む:

    • ワーケーション需要: 高速Wi-Fiを整備し、静かで広々とした空間で仕事と休暇を両立したい層に特化。周辺の自然体験(サイクリング、釣りなど)と組み合わせたプランを提案。

    • 家族・グループ向け: 広い庭や3DKの間取りを活かし、子供連れの家族や多人数グループが、ホテルではできない「まるで実家に帰省したような」体験を提供。長期滞在を促す割引も検討。

    • 特定の趣味層: 例えば、近隣にゴルフ場や釣りスポットがあれば、それらの趣味を楽しむための拠点としてのニーズを掘り起こす。

  2. 独自のコンセプトと体験の提供:

    • 「田舎暮らし体験」民泊: 広々とした裏庭で家庭菜園ができる、地元の食材を使った料理体験ができる、伝統的な遊び道具(竹馬、けん玉など)を提供するなど、都市では味わえない体験を売りにする。

    • 地域の魅力を発信: 地元商店街の案内マップ作成、おすすめの食事処、隠れた名所などを積極的に紹介し、地域全体への誘客に貢献する姿勢を見せる。

  3. 運営コストの徹底的な削減:

    • セルフチェックイン/アウトの導入: 無人で対応できるようにし、人件費を削減。

    • 清掃の工夫: ゲストに簡単な清掃を依頼する仕組みや、清掃間隔を空けるための長期滞在割引などを検討。

    • 備品のシンプル化: 必要最低限の設備に絞り、消耗品も業務用でコストを抑える。

  4. 地元コミュニティとの連携強化:

    • 地域のイベント情報などを積極的に提供し、ゲストに地元との交流を促す。

    • 地元の農家や漁師と提携し、新鮮な食材を提供するオプションを用意する。

    • 地域住民に民泊への理解を求める努力を怠らない。

この物件は、安易な気持ちで手を出すと失敗する典型的なケースです。しかし、もしあなたが「民泊で稼ぐ」こと以上に「地方創生に貢献したい」「独自の体験を提供したい」という強い情熱と覚悟、そして潤沢な資金と時間を持ち合わせているのであれば、**「儲からないが、やりがいはある」**という可能性はゼロではありません。

あなたは、この物件で「利益」を追求しますか?それとも「情熱」を追求しますか?