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【兵庫・西脇市】新西脇駅徒歩1分!6DK戸建てで「DIY民泊」は夢か現実か?辛口診断

物件情報

 

 

以下は今回診断する物件の概要です。

  • 物件名: 【大家族に嬉しい6DK】新西脇駅徒歩1分❗️フリーレント1ヶ月❗️

  • 掲載元: ジモティー (投稿ID : 1ixo8z)

  • 住所: 兵庫県西脇市和布町

  • 最寄り駅: JR加古川線 新西脇駅 徒歩1分

  • 賃料: 55,000円 (事業用の場合は家賃が上がるとのこと)

  • 共益費: 0円

  • 敷金/礼金: 不要 (初期費用無料)

  • 使用部分面積: 103.98㎡ (1階77.32㎡、2階26.66㎡)

  • 間取り: 6DK

  • 建物: 木造2階建て

  • 築年月(築年数): 昭和41年 (築58年)

  • 特記事項:

    • フリーレント1ヶ月

    • DIYし放題(入居者さんが自分でリノベ可)

    • 現状渡し物件

    • 民泊可、会社の寮としての使用可、シェアハウス可、外国籍の方歓迎

    • 初期費用無料(仲介手数料、敷金、礼金無料)※家賃保証料、火災保険(家財保険は任意)は別途

    • 駐車場なし(近隣で借りる形、DIYでブロック塀をなくせば停められそう)

    • 譲渡型にも応相談

    • 生活に必要な建物設備の各種修繕メンテナンスは入居者様のご負担

    • 短期解約解約金あり(1年未満:110,000円、1年以上2年未満:55,000円)

    • 退去時クリーニング代あり(ペットなし:55,000円、ペットあり:110,000円)

    • 残置物(照明器具・機能付き便座・空調機器等)あり

詳細はこちらのURLをご参照ください: 物件詳細 および 追加写真・動画


 

民泊適正評価:これは「夢」か「厄介事」か?

 

 

この物件は、民泊運営において「リスキー極まりない」というのが正直な評価です。聞こえの良い言葉の裏に隠された現実を直視しましょう。

 

【致命的な欠点1】「現状渡し」「借主負担」の罠 「DIYし放題」「ご自身でDIYできる方にオススメ」という言葉は、聞こえは良いですが、実態は「大家は一切修繕しない。全て借主負担」ということです。動画を見ると分かりますが、ふすま、壁紙、畳、床など、人が住むには程遠い状態です。水回り(トイレ、風呂)、照明器具、空調機器なども「残置物扱い」であり、使える保証はありません。つまり、民泊としてゲストを迎え入れるレベルにするには、膨大な時間、労力、そして何百万円もの初期投資が必要です。フリーレント1ヶ月や初期費用無料など霞んでしまうほどの費用が発生するでしょう。

 

【致命的な欠点2】立地と集客力の問題 「新西脇駅徒歩1分」は確かに駅近ですが、新西脇駅はJR加古川線の駅であり、主要都市からのアクセスが良いとは言えません。西脇市は観光地としての知名度も高くなく、一般的な観光客が集まる場所ではありません。インバウンド需要を狙うにしても、よほど魅力的なコンセプトや、近隣に人を惹きつけるコンテンツがない限り、高い稼働率を維持するのは非常に困難です。車社会の地域で駐車場がない点も大きなマイナスです。

 

【致命的な欠点3】築58年の木造物件が抱える闇 昭和41年築、築58年の木造物件は、以下のような深刻な問題を抱える可能性が高いです。

  • 耐震性: 1981年以前の旧耐震基準の建物であり、大地震時の安全性が担保できません。民泊として人を宿泊させる責任を考えると、極めて大きなリスクです。

  • 断熱性・防音性: 極めて低いでしょう。夏は暑く冬は寒い、隣家や外部の音が筒抜け、ゲストの生活音も近隣に響きやすいなど、宿泊体験の質の低下と近隣トラブルの温床になります。

  • 設備老朽化: 給排水管、電気配線、屋根、外壁など、あらゆる設備が寿命を迎えている可能性があり、修繕が借主負担であることを考えると、ランニングコストが青天井になる恐れがあります。雨漏りや水漏れが起きてからの対応では遅すぎます。

【懸念点4】事業用契約の賃料アップと保証会社費用 「事業用の場合は家賃が上がります」とのこと。現在の5.5万円が個人契約の家賃とすれば、民泊として利用する場合はさらに家賃が上がる可能性があり、収益性を圧迫します。また、家賃保証料が別途かかる点も初期費用、ランニングコストの両方で負担となります。

 

 

契約前に確認するポイント

 

 

この物件に少しでも興味があるなら、以下の点を徹底的に確認し、甘い言葉の裏側を深掘りしてください。

  1. 水回り・電気設備・ガス配管の総点検: 素人目ではなく、専門家(工務店、設備業者)に依頼し、使用可能か、修繕にどれくらいの費用がかかるか、見積もりを取るべきです。特に排水管の詰まりや漏水、電気容量不足、ガスの安全確認は最重要です。

  2. 耐震診断と改修費用: 築年数を考えると、耐震診断は必須です。診断結果と、もし耐震補強が必要な場合の費用を確認してください。

  3. 内装工事の見積もり: 民泊として貸し出すための内装工事(壁、床、畳の入れ替え、水回りのリフォームなど)にかかる費用を具体的に複数業者から見積もりを取りましょう。DIYといっても、専門知識と技術、工具が必要な作業が多く、素人が手を出すと危険な場合もあります。

  4. 消防法の適合性: 民泊として営業するには、消防法の基準を満たす必要があります。感知器、消火器、誘導灯などの設置義務、避難経路の確保など、必要な設備とその費用を消防署や専門業者に確認してください。

  5. 西脇市の民泊条例・規制: 兵庫県や西脇市独自の条例や規制(例えば、周辺住民への説明義務、運営上の制限など)がないか、事前に市役所などに確認しましょう。

  6. 駐車場: 駐車場がない場合、周辺の月極駐車場を借りた場合の費用と、ゲストへの案内方法を具体的に検討してください。ブロック塀をなくして駐車場にするDIYが本当に可能か、費用はどれくらいか、法的な問題はないか、工事業者と相談しましょう。

  7. 譲渡型契約の詳細: 「譲渡型にも応相談」とのことですが、具体的にどのような条件で譲渡可能なのか、費用や期間、リスクなどを詳しく確認し、弁護士などの専門家にも相談することをおすすめします。


 

周辺地域の平均稼働率

 

 

兵庫県全体の民泊稼働率は変動がありますが、主要都市(神戸、大阪に近い一部地域など)を除くと、地方都市の稼働率は一般的に低めです。西脇市のような地域で、年間平均稼働率が50%を超えることは稀であり、30%〜40%程度で推移する可能性も十分に考えられます。特に観光客を強く惹きつける要素が少ない地域では、個人が民泊を運営して安定した収益を出すのは非常に困難です。

 

 

運営した場合の想定年間利益(極めて悲観的なシナリオ)

 

 

賃料5.5万円という数字だけを見ると安く感じますが、民泊運営においては「安かろう悪かろう」のリスクが伴います。今回は、楽観的な数字ではなく、現実的な「稼げない」シナリオを提示します。

  • 月額賃料: 55,000円 (事業用で値上がりする可能性も考慮せず、最低ラインで計算)

  • 年間賃料: 55,000円 × 12ヶ月 = 660,000円

  • 平均宿泊単価: 西脇市で一般的なホテルや旅館が少ないことを考慮し、1泊1組15,000円(あくまで仮定。これでも高い可能性あり)

  • 年間営業可能日数: 180日(住宅宿泊事業法による上限)

  • 想定稼働率: 30%(かなり苦戦すると仮定)

  • 年間想定稼働日数: 180日 × 0.30 = 54日

  • 年間想定売上: 15,000円 × 54日 = 810,000円

ここから諸経費を差し引きます。

  • プラットフォーム手数料: 売上の約10% = 81,000円

  • 清掃費・消耗品費: (1回5,000円として、54回分) = 270,000円

  • 光熱費・通信費: (築古のため高めに見積もり、月2万円) = 240,000円

  • 修繕積立費・保険料: (いつ壊れてもおかしくないため、月2万円) = 240,000円

  • 家賃保証料: 年間約2万円~4万円程度かかる可能性あり(月2,000円と仮定) = 24,000円

  • 年間総費用(賃料含む): 660,000円 + 81,000円 + 270,000円 + 240,000円 + 240,000円 + 24,000円 = 1,515,000円

  • 想定年間利益(税・初期費用回収前): 810,000円 - 1,515,000円 = ▲705,000円

この計算では、年間で約70万円の赤字という結果になりました。これは、初期投資(数百万円レベル)を考慮する以前の、ただ運営するだけでかかる費用です。フリーレントや初期費用無料も、この赤字額を前にすれば雀の涙でしょう。

 

 

想定利益が低い場合の改善するためのアイデア(ただし、この物件では厳しい現実)

 

 

もし、上記のように利益が低い、あるいは赤字の可能性が高いと判断した場合、本来であれば改善策を講じるべきですが、この物件の場合は根本的な問題が多すぎます。

 

【根本的な問題の克服は困難】

  • 初期投資の重さ: 「現状渡し」「借主負担」では、民泊として運用できるレベルにまで引き上げるための初期投資が莫大すぎます。これを回収するには、何十年もかかる計算になりかねません。

  • 立地の弱さ: 西脇市という観光地として未成熟な地域で、一般的な民泊として集客力を劇的に上げるのは不可能です。

  • 建物のリスク: 築58年の木造物件が抱える耐震性、老朽化による突発的な修繕費用、低い断熱・防音性は、改善にも巨額の費用がかかるか、そもそも改善が難しい場合があります。

【アイデアとして挙げるが、この物件での実現性は低い】

  1. 超ニッチなコンセプト特化:

    • ワーケーション向け施設: 高速インターネット環境を整備し、静かな環境で集中したいビジネス層をターゲットにする。ただし、地方都市での需要は限定的。

    • 地域体験型民泊: 西脇市の伝統工芸(播州織など)や農業体験と組み合わせたツアー企画など、宿泊以外の体験を売りにする。ただし、企画力と地域との連携が必須。

    • DIY好きコミュニティハウス: 「自分たちでリノベーションを楽しむ」という体験自体を売りにした、超長期滞在型やイベント利用など。非常に限定的で、民泊とは異なるビジネスモデル。

  2. 徹底したコスト削減と多角化:

    • 清掃を完全セルフサービスに: ゲストに清掃を依頼する。ただし、ゲストの満足度低下やトラブルのリスクあり。

    • 会社の寮・グループホーム・シェアハウスとの併用: 稼働率が低い時期は、民泊以外の用途で安定収入を狙う。ただし、民泊と他の用途での契約条件やトラブル発生時の対応を明確にしておく必要あり。

 

結論:これは民泊「体験」物件、収益は二の次

 

 

この物件は、「DIYを通して空き家再生を体験したい」「地方で自分たちの手でコミュニティ拠点を作りたい」といった、収益よりも自己実現や社会貢献に重きを置く人にとっては面白いかもしれません。しかし、「民泊で儲けたい」「投資として利益を出したい」と考えている方にとっては、極めて危険な物件です。

 

フリーレントや初期費用無料は、あくまで「餌」であり、その後の莫大な費用とリスク、そして低い収益性という現実を覆すものではありません。甘い言葉に騙されず、冷静かつ厳しい目でこの物件の「現実」を直視し、賢明な判断を下してください。民泊運営は決して楽な道ではありません。特にこのような物件では、その困難さは想像を絶するでしょう。