物件情報
この物件の詳細は以下の通りです。
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住所: 熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字河陰
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最寄り駅: 南阿蘇鉄道 阿蘇下田城駅 徒歩21分
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賃料: 7万円
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管理費等: なし
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敷金/礼金: 敷金2ヶ月 / 礼金なし
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使用部分面積: 30m2
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種別: 貸店舗
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築年月(築年数): 2025年7月 (築1年未満)
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契約期間: 3年
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特記事項:
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バリアフリー
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駐車場3台分以上(無料)
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飲食業も相談可能
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民泊業としてのご使用も可能です
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バス、トイレ等の設置も相談可
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「南阿蘇の景色を楽しみながら広いお庭でBBQをしましょう!宿泊事業がおすすめです♪」
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賃貸保証等:加入要(初回100% 年間10%)
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保険等:要
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物件の詳細はこちらからご確認ください: 熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字河陰 阿蘇下田城駅 貸店舗 物件詳細
民泊適正評価
この物件は、築1年未満という新しさ、そして**「民泊業としての使用も可能」**というオーナーの意向が明確である点が最大の魅力です。新しい物件であるため、老朽化による修繕リスクが低く、ゲストにとっても清潔感は大きなプラスポイントになります。バリアフリー設計や駐車場3台分以上という点も、ファミリー層や高齢者、車で移動する観光客にとっては非常に魅力的です。南阿蘇の雄大な景色を楽しみながらBBQができるというコンセプトも、リゾート地の民泊としては理想的です。
しかし、この物件を民泊として運営する際には、甘くない現実がいくつか存在します。まず、「貸店舗」であるという点です。写真を見る限り、内装は店舗仕様であり、そのまま宿泊施設として利用するには大幅な内装工事と設備投資が必要になることが予想されます。特に、「バス、トイレ等の設置も相談可」という記載は、現状ではバス・トイレが設置されていないことを明確に示唆しており、ここが最大の落とし穴です。宿泊施設として機能させるためには、水回り設備の設置は必須であり、これには多大な費用がかかります。
次に、立地です。阿蘇下田城駅より徒歩21分という距離は、公共交通機関を利用するゲストにとっては非常に不便です。事実上、車でのアクセスが必須となります。また、南阿蘇村は阿蘇山の観光拠点ではありますが、福岡や熊本市といった都市部からのアクセスは、公共交通機関ではやや時間がかかります。冬季の積雪や路面凍結なども、集客に影響を与える可能性があります。30m2という広さは1K相当で、単身者やカップル向けであり、ファミリーやグループには手狭です。
月額7万円という賃料は一見手頃に見えますが、宿泊施設として機能させるための初期投資(水回り、内装、家具家電など)が莫大にかかることを考えると、総投資額はかなり高額になる覚悟が必要です。
契約前に確認するポイント
「貸店舗」を民泊利用する際には、一般的な賃貸物件とは異なる、以下のような非常に重要な確認事項があります。
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水回り設置の費用と範囲: 「バス、トイレ等の設置も相談可」とありますが、設置工事の費用は誰が負担するのか、排水設備や給水管の引き込みは可能か、どこまで設置が認められるのか(シャワールームのみか、浴槽も可か)など、具体的な内容と見積もりを必ずオーナーと工事業者双方から取得してください。これができない、あるいは莫大な費用がかかる場合、民泊運営は現実的ではありません。
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用途変更の必要性と費用: 貸店舗として契約し、宿泊施設として利用する場合、建築基準法上の用途変更(確認申請)が必要になる場合があります。これには設計費用や申請費用がかかり、時間も要します。必ず建築士や行政に相談し、事前に確認してください。
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消防法への適合: 宿泊施設は消防法上の規制が厳しくなります。火災報知器、消火器、誘導灯の設置など、必要な消防設備とその費用を確認しましょう。既存の建物構造では対応が難しいケースもあります。
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民泊新法(住宅宿泊事業法)への適合: 店舗物件を民泊利用する場合、旅館業法の簡易宿所として許可を得るのが一般的です。そのための申請手続き、必要な設備、運営上の規制などを保健所や行政に確認してください。
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賃貸保証の条件: 「初回100% 年間10%」という保証料は高めです。民泊として加入可能か、どのような条件で適用されるか、詳細を確認しましょう。
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初期投資の全体像: 賃料だけでなく、バス・トイレ設置、内装工事、家具家電購入、消耗品、保険、各種申請費用など、開業までに発生する全ての費用を見積もり、資金計画を立てましょう。甘く見積もると破綻します。
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近隣住民への配慮とルール: 貸店舗とはいえ、周辺が住宅地である場合、騒音やゴミ出しなど、近隣トラブルに発展しないよう、事前に運営ルールを明確にし、ゲストにも周知徹底する必要があります。
周辺地域の平均稼働率
熊本県阿蘇地域は観光地として非常に人気がありますが、南阿蘇村の民泊に関する具体的な平均稼働率データは限定的です。一般的に、地方の観光地における民泊稼働率は30%〜50%程度が目安となります。
しかし、この物件は阿蘇下田城駅から徒歩21分と駅からのアクセスが悪く、基本的に車での来訪が前提となります。また、30m2の1K相当という広さは、ファミリー層やグループ旅行者を主なターゲットとする阿蘇の民泊物件としては手狭に感じられる可能性があります。そのため、他の大型物件やより主要な観光地に近い物件と比較すると、稼働率は伸び悩む可能性があります。月間20%〜30%程度という厳しい稼働率も視野に入れておくべきでしょう。特に、バス・トイレ設置などの初期投資を回収するためには、この稼働率では不十分です。
運営した場合の想定年間利益
上記の稼働率の想定に基づき、この物件で民泊を運営した場合の想定年間利益を試算してみましょう。ここでは、現実的な厳しさを反映した辛口な設定で計算します。
【前提条件】
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月額賃料: 7万円
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1泊あたりの宿泊単価: 30m2の1K相当であり、競合も多いため、1泊あたり8,000円と仮定します。
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清掃費: 1回あたり5,000円と仮定
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プラットフォーム手数料: 売上の15%と仮定
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光熱費・通信費など: 月額20,000円と仮定
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その他消耗品費: 月額4,000円と仮定
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民泊稼働上限: 年間180日(旅館業法許可取得の場合)
シナリオ:辛口な稼働率(月間25%稼働の場合)
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想定稼働率: 月間25%(年間91日稼働)
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年間収入の試算:
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年間売上 = 宿泊単価 × 年間稼働日数 = 8,000円/泊 × 91泊 = 728,000円
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年間費用の試算:
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年間賃料 = 7万円/月 × 12ヶ月 = 840,000円
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年間清掃費 = 5,000円/回 × 46回(91日の半分、小数点切り上げ)= 230,000円
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年間プラットフォーム手数料 = 728,000円 × 15% = 109,200円
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年間光熱費・通信費 = 20,000円/月 × 12ヶ月 = 240,000円
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年間消耗品費 = 4,000円/月 × 12ヶ月 = 48,000円
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年間費用合計 = 840,000円 + 230,000円 + 109,200円 + 240,000円 + 48,000円 = 1,467,200円
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想定年間利益(運営費のみ):
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想定年間利益 = 728,000円 - 1,467,200円 = -739,200円
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この試算が示す通り、運営費だけでも年間約74万円もの赤字が出る可能性が高いという非常に厳しい結果となりました。さらに、この試算には「バス、トイレ等の設置」や内装工事、家具家電購入といった莫大な初期投資が一切含まれていません。これらの費用を加味すれば、数年間で数百万円単位の持ち出しとなることは避けられないでしょう。築浅だからといって安易に飛びつけば、破綻は目に見えています。
想定利益が低い場合の改善するためのアイデア
この物件で民泊運営を行い、事業として成立させるには、並々ならぬ努力と斬新なアイデア、そして多額の先行投資が必要になります。
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水回り設置と内装工事を徹底的に見積もる:
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専門業者から水回り(バス・トイレ・ミニキッチン)設置と内装工事の複数見積もりを取得し、実現可能性と費用対効果を徹底的に検討する。これができないのであれば、事業は成立しません。
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宿泊施設としての機能だけでなく、阿蘇の景観に合うようなデザイン性も考慮し、高単価設定の根拠とする。
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ターゲット層の徹底的な絞り込みと特化:
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阿蘇観光の拠点としての利用: 駐車場3台分以上を活かし、レンタカー利用のインバウンド旅行者や、車で移動する国内のファミリー・グループ(ただし30m2では手狭なため、最大2〜3名程度に限定)をターゲットにする。
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ワーケーション/長期滞在: 高速Wi-Fi環境を整備し、阿蘇の自然の中で仕事と休暇を両立したいワーケーション層を誘致。長期割引プランを設定する。
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アクティビティ志向のゲスト: 周辺のアウトドアアクティビティ(トレッキング、サイクリング、乗馬など)と連携し、アクティビティ後の宿泊拠点としてのニーズを取り込む。
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付加価値の提供と単価アップ:
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BBQ設備の充実: 広い庭でBBQができる環境を最大限にアピールし、BBQセットのレンタルや、地元の食材(あか牛、地野菜など)の手配サービスを提供する。
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阿蘇ならではの体験: 阿蘇の温泉、地元の食事処、穴場スポットなどの情報をきめ細かく提供し、ゲストが充実した滞在を送れるようサポートする。
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送迎サービス: 阿蘇下田城駅や近隣の主要スポットへの送迎サービスをオプションで提供し、交通の不便さを解消する。
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効率的な集客とマーケティング:
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Airbnbだけでなく、Booking.com、楽天トラベル、じゃらんnetなど、主要なOTAに幅広く掲載する。
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InstagramやX(旧Twitter)などで、物件の魅力や周辺の観光情報を積極的に発信し、視覚的に訴求する。特にBBQや庭の魅力を動画でアピールする。
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地元の観光協会や旅行会社と連携し、ツアーの一部として組み込んでもらうなど、広範囲でのプロモーションを行う。
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運営効率の徹底的な改善:
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スマートロック導入や、詳細なセルフチェックインガイド作成により、無人運営を基本とする。
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清掃業者との連携を密にし、コストを抑えつつ高い清掃品質を維持する。
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この物件は、築浅でポテンシャルを秘めているものの、「貸店舗」であるという点が大きな初期投資とハードルを生み出します。安易な気持ちで「民泊可」という言葉に飛びつくのではなく、緻密な資金計画と、南阿蘇という立地での強力な差別化戦略が不可欠です。果たして、この物件であなたは「宿泊事業成功」の夢を現実のものにできるでしょうか?