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北九州市小倉北区で民泊を始める?「敷礼ゼロ」1K物件のリアルと厳しい現実

物件情報

 

 

この物件の詳細は以下の通りです。

  • 住所: 〒802-0026 福岡県北九州市小倉北区大畠1丁目6−14

  • 最寄り駅: 北九州高速鉄道(北九州モノレール) 旦過駅 (徒歩距離不明)

  • 賃料: 3万円

  • 管理費等: 2,000円

  • ジャンル: アパート

  • 敷金/礼金: なし / なし

  • 間取り/面積: 1K 25平米

  • 階建: 1階 / 2階(※物件はどちらかの階の可能性)

  • 建築年数: 築42年

  • 特記事項: リフォーム済み(トイレ・バス別)、屋内洗濯機置き場あり、近所にスーパー多数、駐車場複数台空きあり、外国籍・生活保護受給者・無職の方など保証会社利用可、事務所利用・倉庫利用・会社登記なども可、民泊要相談、敷金・礼金・仲介手数料・更新料0円、初期費用6万円以内で即日入居可。

  • 周辺: 公園が目の前(大畠公園)

物件の詳細はこちらからご確認ください: 【即入居可!】【敷金・礼金・手数料・更新料0円!】トイレ・バス別リフォーム済み!家賃のみで入居可能![民泊要相談]

 

 

民泊適正評価

 

 

この物件の最大の魅力は、なんと言っても**「初期費用ゼロ(敷金・礼金・手数料・更新料なし)」**という破格の条件です。さらに家賃3万円、管理費2,000円という低コストは、民泊事業の参入障壁を極限まで下げるように見えます。トイレ・バス別でリフォーム済み、屋内洗濯機置き場ありという設備面も、1Kとしては悪くありません。近所にスーパーが多数あり、生活利便性が高い点も長期滞在を視野に入れるなら評価できます。目の前に公園がある環境も、ファミリー層を意識した際にプラスになりえます。

 

しかし、安さには必ず理由があります。まず、**「築42年」**という築年数は、大規模なリフォームが施されていても、配管や共用部分など見えない部分で老朽化が進んでいる可能性があります。突発的な修繕費が発生するリスクは十分に考慮すべきです。また、詳細な場所が「小倉北区大畠」であり、最寄り駅がモノレール「旦過駅」ですが、そこからの具体的な徒歩距離が不明です。もし駅から遠い場合、観光客にとっての利便性は著しく低下します。そして、駐車場が複数台空きありとありますが、観光客が車で訪れるケースは北九州では限定的かもしれません。

 

さらに、最も厳しいのは**「1K 25平米」**という間取りと広さです。民泊として集客する際、単身者やカップルがメインターゲットとなり、ファミリー層やグループ利用は非常に困難です。また、低価格帯の1K物件は競合が非常に多く、価格競争に陥りやすい傾向があります。単価を高く設定すれば集客は難しくなり、低く設定すれば収益性が圧迫されます。初期費用が安いからといって、無計画に手を出せば、最終的には「薄利多売」どころか「赤字多売」になりかねないリスクをはらんでいます。

 

 

契約前に確認するポイント

 

 

「民泊要相談」の物件であるため、契約前に以下の点を徹底的に確認してください。

  • 「民泊要相談」の具体的な内容: オーナーがどの程度民泊に理解があるのか、また、どのような条件(宿泊日数制限、ゲストからのクレーム対応、消防法への対応など)であれば許可が出るのか、必ず書面で確認しましょう。口頭での約束はトラブルの元です。

  • 「敷金・礼金・手数料・更新料0円」の裏側: 退去時のクリーニング費用や原状回復費用について、どの程度の負担が求められるのかを明確に確認してください。「退去時払い可」とありますが、想定外の高額請求とならないよう、細部まで確認が必要です。

  • 保証会社の利用条件: 「多数の保証会社が利用可能」とありますが、民泊利用の場合に適用される保証会社のプランや保証料、審査基準を具体的に確認しましょう。

  • 近隣住民への説明と協力: アパートの一室であるため、民泊運営は近隣住民の理解なしには成り立ちません。オーナーは近隣への説明を行う意思があるか、また、トラブル発生時の対応体制などを確認しておくべきです。

  • ライフラインの契約: 電気・ガス・水道、インターネット回線などの契約名義や支払方法について、民泊運営に際してどのような手続きが必要か、またはオーナーからの特別な指示があるかを確認しましょう。

  • 築年数によるリスク: 築42年であるため、水漏れや給湯器の故障など、設備トラブルのリスクを念頭に置き、修繕費用の負担について明確にしておきましょう。

 

周辺地域の平均稼働率

 

 

北九州市は福岡市に次ぐ福岡県第二の都市ですが、観光客の絶対数や宿泊需要は福岡市中心部には及びません。小倉北区は中心部ではありますが、この物件がある大畠エリアは、観光客が集中する小倉駅周辺や繁華街からはやや離れています。

 

一般的な地方都市の民泊稼働率は30%〜50%程度とされていますが、北九州市の場合、ビジネス需要や特定のイベント需要が見込める場合もあります。しかし、1Kという間取りと、特段の観光資源が目の前にあるわけではないこの物件の場合、無策に運営すれば稼働率はさらに低くなる可能性が高いです。月間20%〜30%程度という厳しい稼働率も視野に入れておくべきでしょう。この稼働率で利益を出すのは至難の業です。

 

 

運営した場合の想定年間利益

 

 

上記の稼働率の想定に基づき、この物件で民泊を運営した場合の想定年間利益を試算してみましょう。ここでは、現実的な厳しさを反映した辛口な設定で計算します。

 

【前提条件】

  • 月額賃料+管理費: 3万円 + 2,000円 = 32,000円

  • 1泊あたりの宿泊単価: 1K物件、価格競争を考慮し、1泊あたり5,000円と仮定します。(都市部のビジネスホテル以下となる可能性も)

  • 清掃費: 1回あたり4,000円と仮定

  • プラットフォーム手数料: 売上の15%と仮定

  • 光熱費・通信費など: 月額15,000円と仮定

  • その他消耗品費: 月額3,000円と仮定

  • 民泊稼働上限: 年間180日


シナリオ:辛口な稼働率(月間25%稼働の場合)

  • 想定稼働率: 月間25%(年間91日稼働)

  • 年間収入の試算:

    • 年間売上 = 宿泊単価 × 年間稼働日数 = 5,000円/泊 × 91泊 = 455,000円

  • 年間費用の試算:

    • 年間賃料+管理費 = 32,000円/月 × 12ヶ月 = 384,000円

    • 年間清掃費 = 4,000円/回 × 46回(91日の半分、小数点切り上げ)= 184,000円

    • 年間プラットフォーム手数料 = 455,000円 × 15% = 68,250円

    • 年間光熱費・通信費 = 15,000円/月 × 12ヶ月 = 180,000円

    • 年間消耗品費 = 3,000円/月 × 12ヶ月 = 36,000円

    • 年間費用合計 = 384,000円 + 184,000円 + 68,250円 + 180,000円 + 36,000円 = 852,250円

  • 想定年間利益:

    • 想定年間利益 = 455,000円 - 852,250円 = -397,250円


この試算が示す通り、年間で約40万円もの赤字が出る可能性が高いという非常に厳しい結果となりました。初期費用が抑えられても、稼働率が低い上に1Kという単価が伸びにくい物件では、家賃+管理費の固定費すら回収できないリスクが現実的です。「家賃のみで入居可能」という甘い言葉に誘われても、運営すれば大きな負債を抱えかねません。

 

 

想定利益が低い場合の改善するためのアイデア

 

 

この物件で民泊運営を行い、赤字を回避し利益を出すためには、相当な努力と、もはや「民泊」という枠を超えた発想が必要になります。

  1. ターゲット層の徹底的な再検討と絞り込み:

    • 超短期ビジネス出張者: 数日〜1週間程度のビジネス出張者で、ホテルよりも安く、かつ自炊できる環境を求める層に特化する。

    • 受験生・就職活動生: 大学や企業が近くにある場合、受験や面接で一時的に滞在する学生向けに、静かで学習しやすい環境をアピールする。

    • 医療関係者/見舞い客: 近隣に病院がある場合、入院患者の見舞いや付き添いの家族向けに、安価で長期滞在可能な選択肢として提案する。

    • マンスリー/ウィークリー賃貸へのシフト: 民泊としての日々清掃やゲスト対応の手間、そして年間180日規制を考えると、通常のマンスリー/ウィークリーマンションとして運営し、より安定した収益を目指す方が賢明な選択肢かもしれません。

  2. 徹底的な低価格戦略とコスト削減:

    • 大胆な価格設定: 周辺のビジネスホテルや他の民泊物件より圧倒的に低い価格を設定し、価格で勝負する。ただし、これが赤字を深める可能性もある諸刃の剣です。

    • セルフクリーニングの導入: ゲストに清掃協力をお願いする代わりに、宿泊料金を割引くなどして清掃費を極限まで抑える。

    • スマートロックと遠隔管理: 鍵の受け渡しやゲスト対応を完全に無人化し、人件費を削減する。

  3. 付加価値の創出(限定的):

    • 高速Wi-Fiの完備: ビジネス利用を考慮し、安定した高速インターネット環境を整備する。

    • シンプルなミニキッチン家電: 電子レンジ、電気ケトル、ミニ冷蔵庫など、最低限の自炊ができる環境を整える。

    • 周辺情報マップの提供: スーパー、コンビニ、飲食店、病院など、生活に必要な周辺施設を分かりやすくまとめた地図を提供する。

この物件は、初期投資が低いという最大の魅力がありますが、それだけで民泊で成功できるほど甘い世界ではありません。家賃が安くても、稼働率が上がらなければ赤字は避けられず、特に1Kという間取りでは単価アップにも限界があります。安易な気持ちで参入するのではなく、極めて現実的かつ綿密な事業計画を立て、様々なリスクを考慮した上で判断することが不可欠です。果たして、この物件であなたは利益を出せる自信がありますか?