物件情報
この物件の詳細は以下の通りです。
-
価格: 300万円(名義変更、譲渡までの諸経費込み)
-
住所: 三重県尾鷲市三木浦町
-
間取り/面積: 母屋8DKK + 2間離れ + 家庭菜園用庭付き (200坪以上)
-
階建: 2階建て
-
築年数: 築60年位
-
特記事項:
-
キッチン2つ、かまどあり
-
2間離れ(トイレ、風呂なし)は物置やストック置きに良い
-
花壇や家庭菜園用の3坪位の畑あり
-
手入れが行き届いており、すぐ住める状態
-
釣りの出来る海まで徒歩2分(階段を降りる)
-
潮干狩りまで8分
-
世界遺産・熊野古道や獅子岩まで車で20〜30分
-
水害に強い立地(去年、今年の大雨でも町内で水害なし)
-
高速降り口まで2〜3分で交通の便が良い
-
トイレは町内全て汲み取り式(普通の家族数なら5年位汲み取らなくて大丈夫な大きさの便槽)
-
駐車場なし(海の駐車場に停めるか、近所の方に言って置かせてもらえる可能性あり)
-
直したい所があればリフォームも格安で受けられる
-
物件の詳細はこちらからご確認ください: 諸経費込み込み☆釣りの出来る 海まで徒歩2分☆潮干狩り8分☆世界遺産まで車で20分☆古民家カフェ 民泊などに好立地☆三重県尾鷲市8DKK+2間離れ+家庭菜園用 庭付
民泊適正評価
この物件は、価格300万円で200坪以上の広大な敷地、8DKKという部屋数、そして海や世界遺産へのアクセスをアピールしており、古民家民泊やカフェ運営の夢を描く人にとっては魅力的に映るでしょう。特に、**「釣りの出来る海まで徒歩2分」「潮干狩り8分」「世界遺産・熊野古道まで車で20~30分」**という立地は、特定の観光客層には響く可能性があります。また、高速降り口が近い点や、水害に強いという地域特性も、地方物件としては安心材料です。
しかし、この物件には見過ごせない、民泊運営を大きく左右する致命的な欠点が複数存在します。
まず、**「駐車場がない」**という点は、車社会の地方において集客の大きな足かせとなります。特にファミリーやグループ旅行者は、荷物も多く、駐車場がない物件は選択肢から外れる可能性が高いです。「海の駐車場に停めるか、近所の方に言って置かせてもらえる」という説明は、ゲストにとっては非常に不便で、トラブルの原因にもなりかねません。
次に、**「トイレが汲み取り式」**であること。これは現代の旅行者、特にインバウンドのゲストにとっては、受け入れがたい大きなハードルとなるでしょう。清潔感や利便性を重視する現代の宿泊施設において、汲み取り式トイレはゲスト満足度を著しく低下させる要因となります。5年汲み取らなくて大丈夫な大きさの便槽があるとはいえ、定期的な汲み取りの手配や、衛生管理の手間は運営者にとって大きな負担です。
さらに、**「築60年位」**という築年数も懸念材料です。手入れが行き届いているとはいえ、老朽化による突発的な修繕費や、冬場の寒さ対策、断熱性能の低さなどが考えられます。2間離れにトイレ・風呂がない点も、利用用途を限定します。
「古民家カフェや民泊に最適」という売り文句は、運営者の努力次第で実現可能かもしれませんが、上記の欠点を補って余りある魅力を生み出さなければ、集客は非常に困難を極めるでしょう。
契約前に確認するポイント
この物件で民泊運営を検討するなら、以下の点を徹底的に確認し、リスクを最小限に抑える必要があります。
-
汲み取り式トイレの改修可能性と費用: 最優先で水洗トイレへの改修を検討すべきです。そのための費用、工事期間、補助金制度の有無などを事前に調査しましょう。これができないのであれば、民泊運営は極めて困難です。
-
駐車場の確保: 近隣住民に駐車スペースを借りる場合、その条件(料金、期間、利用時間帯など)を書面で明確にし、ゲストへの案内方法も確立する必要があります。恒久的な駐車場確保が難しい場合、送迎サービスなどの代替案も検討が必要です。
-
物件の正確な状態把握: 築60年という点を踏まえ、専門家による建物診断(耐震性、雨漏り、シロアリ、配管、電気系統など)を実施し、将来的な修繕費用を把握しましょう。「格安でリフォームも可能」という話も、具体的な見積もりと実績を確認すべきです。
-
地域の条例・規制: 尾鷲市独自の民泊に関する条例や規制、消防法への適合状況などを市役所などで確認してください。古民家の場合、特に消防設備の要件が厳しくなることがあります。
-
近隣住民との関係構築: 閑静な地域であるため、民泊運営は近隣住民の理解と協力が不可欠です。事前に挨拶を行い、騒音やゴミ出しなど、トラブルにならないよう配慮する姿勢を示すべきです。
-
水道・電気・ガス・インターネットの状況: 特に水道は井戸水か上水道か、水量や水質はどうか。インターネット回線は引き込み可能かなど、現代の生活に不可欠なインフラの状況を確認しましょう。
周辺地域の平均稼働率
三重県尾鷲市は、熊野古道や豊かな自然、海の幸が魅力の地域ですが、観光客の絶対数や宿泊需要は、伊勢志摩地域や都市部と比較すると限定的です。三重県の観光客入込数データを見ると、尾鷲市の年間入込客数は数十万人規模ですが、宿泊客に限定するとさらに少なくなります。
具体的な民泊の稼働率データは公開されていませんが、地方の観光地における民泊の稼働率は一般的に20%〜40%程度と低めです。特に、この物件の持つ「汲み取り式トイレ」「駐車場なし」という大きなハンディキャップを考慮すると、平均を大きく下回る可能性が高いでしょう。月間10%〜20%程度という非常に厳しい稼働率も覚悟しておくべきです。
運営した場合の想定年間利益
上記の稼働率の想定に基づき、この物件で民泊を運営した場合の想定年間利益を試算してみましょう。ここでは、現実的な厳しさを反映した辛口な設定で計算します。
【前提条件】
-
物件購入価格: 300万円(諸経費込み)
-
リフォーム初期費用: 汲み取り式トイレの水洗化、駐車場整備、その他最低限の改修で500万円と仮定します。(古民家改修は想定以上に費用がかかることが多い)
-
1泊あたりの宿泊単価: 8DKKという広さを活かし、グループ利用で1泊あたり20,000円と仮定します。(ただし、トイレと駐車場の問題でこの単価を維持するのは困難)
-
清掃費: 1回あたり10,000円と仮定
-
プラットフォーム手数料: 売上の15%と仮定
-
光熱費・通信費など: 月額30,000円と仮定(広大なため高め)
-
その他消耗品費: 月額5,000円と仮定
-
民泊稼働上限: 年間180日
シナリオ:辛口な稼働率(月間15%稼働の場合)
-
想定稼働率: 月間15%(年間55日稼働)
-
年間収入の試算:
-
年間売上 = 宿泊単価 × 年間稼働日数 = 20,000円/泊 × 55泊 = 1,100,000円
-
-
年間費用の試算:
-
年間清掃費 = 10,000円/回 × 28回(55日の半分、小数点切り上げ)= 280,000円
-
年間プラットフォーム手数料 = 1,100,000円 × 15% = 165,000円
-
年間光熱費・通信費 = 30,000円/月 × 12ヶ月 = 360,000円
-
年間消耗品費 = 5,000円/月 × 12ヶ月 = 60,000円
-
年間費用合計 = 280,000円 + 165,000円 + 360,000円 + 60,000円 = 865,000円
-
-
想定年間利益(運営費のみ):
-
想定年間利益 = 1,100,000円 - 865,000円 = 235,000円
-
この試算では、運営費だけを見れば年間約23.5万円のプラスとなりますが、初期投資の800万円(物件300万円+リフォーム500万円)を回収するには、34年以上かかる計算になります。これは、事業としては全く成り立たないレベルです。
想定利益が低い場合の改善するためのアイデア
この物件で民泊運営を行い、事業として成立させるには、並々ならぬ努力と斬新なアイデア、そして多額の先行投資が必要になります。
-
汲み取り式トイレの即時改修と駐車場確保:
-
最優先で水洗トイレへの改修工事を行い、現代の宿泊施設としての最低限の基準を満たす。
-
物件の購入価格を抑えられても、この改修費用は必須。
-
駐車場は、近隣の土地を借り上げる、または購入するなどして、確実な駐車スペースを確保する。送迎サービスも検討するが、コストと手間がかかる。
-
-
ターゲット層の徹底的な絞り込みと特化:
-
釣り愛好家: 海が近いという最大のメリットを活かし、釣具のレンタル、釣りのガイド手配、釣った魚を調理できる設備(BBQグリル、大型冷蔵庫など)を充実させる。釣り仲間向けの合宿所としてプロモーションする。
-
熊野古道ウォーカー: 古道散策の拠点として、送迎サービスや、ウォーキング後の疲労回復を促す設備(大型風呂、マッサージチェアなど)をアピールする。
-
古民家体験志向の層: かまどや囲炉裏(あれば)、古民家ならではの雰囲気を最大限に活かし、日本の伝統的な暮らしを体験できるコンセプトを打ち出す。
-
-
複合施設としての運営:
-
「古民家カフェ」としての利用も視野に入れ、民泊とカフェの二毛作で収益を上げる。カフェが地域の交流拠点となり、民泊の集客にも繋がる相乗効果を狙う。
-
家庭菜園を活かし、収穫体験や地元の食材を使った料理教室などを開催し、体験型コンテンツを充実させる。
-
-
徹底的なブランディングと情報発信:
-
物件の持つ「古民家」「海」「世界遺産」といった魅力を最大限に引き出すプロのカメラマンによる写真撮影、動画制作を行う。
-
SNS(Instagram、YouTube、TikTokなど)で、物件の魅力、周辺のアクティビティ、地域の文化などを積極的に発信し、ターゲット層にリーチする。
-
地域の観光協会や旅行会社と連携し、ツアーの一部として組み込んでもらうなど、広範囲でのプロモーションを行う。
-
-
価格設定の工夫:
-
単価が高くても、それに見合う特別な体験やサービスを提供することで、価格競争から脱却する。
-
閑散期には大幅な割引を行うなど、柔軟な料金設定で稼働率を維持する。
-
この物件は、安易に「民泊可」という言葉に飛びつくべきではありません。購入価格の安さ以上に、汲み取り式トイレの改修や駐車場確保といった初期投資、そして地方での集客の難しさという現実が重くのしかかります。生半可な気持ちで手を出せば、夢見ていた古民家民泊は、あっという間に負債と化すでしょう。それでも挑戦するならば、徹底的なリサーチと、他の追随を許さないほどの差別化戦略、そして何よりも「この場所で民泊を成功させる」という強い覚悟が必要です。